オーストラリアのマイクロモビリティ事情|eスクーター・eバイクの普及、規制、安全性と今後

オーストラリアではここ数年、eスクーター、eバイク、eスケートボードなどの小型電動移動手段が急速に身近な存在になっています。
これらは一般にマイクロモビリティ(Micromobility)と呼ばれ、徒歩では少し遠い距離を補う移動手段として、通勤、通学、買い物、配達業務など幅広い用途で使われるようになりました。
一方、オーストラリアではマイクロモビリティに関する全国一律の道路交通ルールがあるわけではありません。連邦政府、州・準州政府、自治体がそれぞれ異なる役割を持ち、同じeスクーターでも州境を越えると合法・違法、年齢、速度、走行場所、免許条件が変わるという特徴があります。
さらに2026年には、e-bikeやeスクーターの事故増加、違法な高出力車、リチウムイオン電池火災などを背景に、連邦政府レベルでも製品安全規制の見直しが本格化しています。
この記事では旅行者向けの利用方法ではなく、オーストラリア社会の中でマイクロモビリティがどのように位置付けられ、どのような法制度、市場、安全上の課題、都市政策を抱えているのかをレポート形式で紹介します。
マイクロモビリティとは?


マイクロモビリティに世界共通の厳密な定義があるわけではありませんが、一般には1人または少人数が短距離移動に利用する、小型・軽量・低速の移動手段を指します。
人力の自転車も広義ではマイクロモビリティに含まれますが、近年オーストラリアで政策課題として注目されているのは、電動モーターとリチウムイオン電池を使ったeマイクロモビリティ(e-Micromobility)です。
ここで重要なのは、日常用語としての「マイクロモビリティ」と、法律上のパーソナル・モビリティ・デバイス(Personal Mobility Device=PMD)は同じ意味ではないことです。
多くの州では、PMDにeスクーター、eスケートボード、eユニサイクルなどを含める一方、ペダル付きのeバイクは別の「自転車」として規制しています。モビリティ・スクーターや電動車いすも、高齢者や障害者の移動支援機器として別の法制度で扱われることが一般的です。
オーストラリアで使われる主なマイクロモビリティ
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 自転車 Bicycle |
人力による最も一般的なマイクロモビリティ。政府の車両登録は通常不要。 |
| eバイク e-bike |
ペダルを主な動力とし、モーターが補助する電動アシスト自転車。多くの州で250W・25km/h基準が中心。 |
| eスクーター e-scooter |
立ち乗り式を中心とする電動キックボード。現在オーストラリアのマイクロモビリティ政策で最も議論が多い車両。 |
| eスケートボード e-skateboard |
電動モーターを備えたスケートボード。州によってPMDとして合法、または公道使用不可。 |
| eユニサイクル e-unicycle |
1輪の電動自立走行機器。クイーンズランド州などでは一定条件下でPMDに含まれる。 |
| セルフバランシング・デバイス | セグウェイ型、ホバーボード型など。構造・出力・速度により法律上の扱いが変わる。 |
| eカーゴバイク e-cargo bike |
荷物・子供などを運ぶ大型eバイク。物流や家庭の自動車代替として注目されている。 |
こうした車両の共通点は、自動車より小さく、比較的低い速度で、「ラスト・マイル」と呼ばれる数km程度の移動を効率化できる点にあります。
なぜオーストラリアで普及した?
オーストラリアの都市は面積が広く、住宅地と鉄道駅、商業地区の間に数kmの距離があることも珍しくありません。
この「歩くには少し遠いが、車を使うほどでもない」という距離と、マイクロモビリティは非常に相性が良いと考えられています。
ラスト・マイル需要
鉄道駅、バス停、職場、自宅の間を補う移動手段として、eバイクやeスクーターが使われるようになりました。
自動車依存の見直し
シドニー、メルボルン、ブリスベンなど大都市では、人口増加に伴う道路混雑や駐車スペース不足が長期的な課題です。
すべての自動車移動をマイクロモビリティへ置き換えることはできませんが、短距離移動の一部を自動車から転換できれば、道路交通量を減らす可能性があります。
eバイクの性能向上
バッテリー容量、モーター、車体設計の進歩によって、従来の自転車では負担だった坂道や長距離も走りやすくなりました。
シェアサービスの登場
スマートフォンで解錠・決済できるシェア型eスクーターやeバイクの導入により、自分で車両を所有しなくても利用できるようになりました。
デリバリー需要
フードデリバリーや小口配送の拡大も、eバイク市場を押し上げた要因の一つです。
オーストラリアのマイクロモビリティ法制度
オーストラリアのマイクロモビリティを理解するうえで最も重要なのが、全国統一ではなく複数の行政レベルに権限が分かれていることです。
| 行政レベル | 主な役割 |
|---|---|
| 連邦政府 | 製品安全、輸入、消費者保護、全国的な安全基準など |
| 州・準州政府 | 道路交通法、合法車両の定義、速度、年齢、ヘルメット、免許、走行場所など |
| 自治体 | シェア事業者との契約、駐車場所、運用エリア、ジオフェンシング、公共空間管理など |
ナショナル・トランスポート・コミッション(National Transport Commission=NTC)は2021年、モデルとなるオーストラリアン・ロード・ルール(Australian Road Rules)にPMDを取り込む改正を行いました。
ただし、このモデルルールがそのまま全国一律で適用されるわけではありません。実際の道路法は州・準州政府が採用・修正するため、現在もかなり大きな地域差があります。
ナショナル・トランスポート・コミッション:Australian Road Rules
州・準州で異なるeスクーター規制
2026年9月時点でも、eスクーターに関する制度は州によって大きく異なります。
| 州・準州 | 私有eスクーター | 制度の特徴 |
|---|---|---|
| ニューサウスウェールズ州 (New South Wales) |
公共空間では原則不可 | 私有eスクーターは道路、歩道、自転車道などで使用不可。政府認可のシェア型試験区域のみ例外。 |
| ビクトリア州 (Victoria) |
合法 | 2024年に試験制度から恒久制度へ移行。16歳以上、走行時上限20km/h。合法車両は最高能力25km/h以下。 |
| クイーンズランド州 (Queensland) |
合法 | 2026年8月31日から原則16歳以上かつ有効な運転免許が必要。合法PMD自体の登録・保険は不要。 |
| 西オーストラリア州 (Western Australia) |
合法 | eRideableとして制度化。16歳以上。車両は25km/h以下などの寸法・重量基準を満たす必要がある。 |
| 南オーストラリア州 (South Australia) |
合法 | 2025年7月13日から私有PMDを恒久的に合法化。16歳以上。 |
| タスマニア州 (Tasmania) |
合法 | PMDは16歳以上。25km/h以下、45kg以下などの要件を設定。 |
| オーストラリア首都特別地域 (ACT) |
合法 | eスクーター、eスケートボードなどをPMDとして制度化。私有車・シェア車の両方が存在。 |
| ノーザンテリトリー (Northern Territory) |
限定的 | 私有eスクーターは原則200W・10km/h以下の低出力車などに限られ、市販の多くの高性能モデルは公共空間では使用できない。 |
最も特徴的なのはニューサウスウェールズ州で、他州の多くが私有eスクーターを合法化する中、2026年9月現在も公共空間では原則禁止を維持しています。
一方、ビクトリア州では州全域で恒久合法化、南オーストラリア州でも2025年に試験段階から一般合法化へ移行しました。
この流れを見ると、オーストラリア全体としては「禁止から試験、試験から恒久制度へ」と移行している一方、制度の統一までは至っていない状況です。
クイーンズランド州の2026年改革
2026年の大きな動きの一つがクイーンズランド州です。
2026年8月31日から、eスクーター、eスケートボード、eユニサイクルなどのPMDを公共の場所で利用する場合、原則として16歳以上かつLearnerを含む有効な運転免許が必要になりました。
同州では合法なeバイクにも同様の年齢・免許条件を導入しています。
ただし合法なeバイク、PMDそのものには、現在も車のようなRegoや強制保険は要求されていません。
クイーンズランド州:Personal mobility device rules
eバイクの法的位置付け
eバイク(e-bike)はマイクロモビリティの一種ですが、道路交通法ではPMDとは別に「自転車」として扱われることが一般的です。
250W・25km/hが全国的な基準の中心
現在、オーストラリアの多くの州で標準となっているのが、ヨーロッパ規格EN 15194に沿った最大連続定格出力250W、25km/hでモーターアシスト停止というEPACです。
従来型の200W以下のパワーアシスト自転車を引き続き認める州もあります。
高出力eバイクは「バイク」に見えても自転車ではない
近年問題になっているのが、750W、1,000Wなどのモーターを搭載し、ペダルを使わず40~50km/h以上で走行できる車両です。
外観にペダルが付いていても、州法のeバイク基準を超えれば、法律上はオートバイなどのモーター車両として扱われる可能性があります。
その場合、車両登録、ナンバープレート、免許、強制保険などが必要になりますが、そもそもオーストラリアの車両安全基準を満たさず登録できない製品もあります。
ニューサウスウェールズ州は移行期
ニューサウスウェールズ州では現在、一部500Wまでのeバイクが認められていますが、政府は2029年3月から250W・EN 15194基準へ移行する予定です。
長期的には各州で250W・25km/h・EN 15194を中心とした規格へ収れんしていく可能性があります。
登録・免許・強制保険
合法なマイクロモビリティの大きな特徴は、自動車やオートバイと違い、一般に車両登録と強制第三者保険の仕組みを持たないことです。
| 項目 | 一般的な合法PMD・eバイク |
|---|---|
| 車両登録・Rego | 通常不要 |
| ナンバープレート | 通常不要 |
| 強制第三者保険 | 通常なし |
| 任意保険 | 加入可能な商品・サービスあり |
| 運転免許 | 州による。多くは不要だが、クイーンズランド州は2026年8月31日から原則必要 |
これは利用者にとって低コストというメリットがありますが、事故時の補償という面では課題になります。
自動車事故ならCTPや各州のMotor Injury Insuranceなどが存在しますが、私有eスクーターの単独事故や歩行者との事故では、同じ仕組みが利用できない場合があります。
このため、マイクロモビリティの普及に合わせて、第三者賠償や個人傷害をどうカバーするかは今後の政策課題の一つです。
シェア型マイクロモビリティ
オーストラリアでeスクーターが社会に広く認知されるきっかけの一つが、自治体と民間事業者によるシェア型サービスでした。
スマートフォンアプリを使って街中の車両を解錠し、短時間利用後に指定エリアへ返却する仕組みです。
シェア型サービスには、自治体側から見ると次のようなメリットがあります。
- 住民が車両を購入しなくても利用できる
- GPSで走行・駐車位置を把握できる
- 速度制限をデジタルで設定できる
- 特定区域への進入禁止を自動化できる
- 利用データを都市交通政策に活用できる
一方で、歩道上への放置、転倒車両、視覚障害者や車いす利用者の通行妨害、私有車より大量に公共空間へ置かれることへの反発も起きました。
その結果、現在のオーストラリアでは「事業者が自由に置く」方式より、自治体が運用区域、台数、駐車場所、速度、事業者数を管理するモデルが主流になっています。
ジオフェンシングとデジタル管理
マイクロモビリティが従来の自転車と大きく違う点の一つが、GPSと通信技術を使ったジオフェンシング(Geofencing)です。
シェアeスクーターでは、GPSで現在位置を把握し、特定の区域に入ると自動的に最高速度を下げたり、モーターを停止したりできます。
ジオフェンシングで可能なこと
- 歩行者の多い区域で自動減速
- 公園や禁止区域への乗り入れ防止
- サービス区域外での走行・返却制限
- 指定駐車場でのみ利用終了を認める
- イベント時だけ臨時の低速区域を設定
南オーストラリア州では、自治体がシェアPMD事業者に対し、ジオフェンシングを利用するかどうかを判断できる制度になっています。
これは、交通規制を道路標識だけで行う従来の自動車交通とは異なる、マイクロモビリティ特有の管理方法です。
都市インフラとの関係
マイクロモビリティの普及は、車両の法律だけで解決できる問題ではありません。
eスクーターやeバイクを安全に利用するには、自転車道、シェアード・パス、交差点、駐車スペースなどの都市インフラが大きく影響します。
「どこを走らせるか」が最大の課題
歩道を走れば歩行者との接触リスクが高まり、一般道路を走れば自動車との速度差が大きくなります。
そのため多くの都市で、自転車・eバイク・eスクーターをまとめて利用できる保護された自転車レーンの整備が重要視されています。
駐車スペース
シェア型eスクーターの普及後、公共空間の新しい課題になったのが駐車です。
歩道の中央、バス停、点字ブロック、建物入口などに放置された車両は、歩行者、とりわけ視覚障害者や車いす利用者に大きな障害となります。
そのため、専用駐車区画やアプリ上で指定するバーチャル・パーキング・ゾーンを導入する自治体が増えています。
公共交通との接続
マイクロモビリティは鉄道やバスを置き換えるより、駅から自宅、駅から職場という短距離を補うことで公共交通の利用可能範囲を広げる役割が期待されています。
事故・安全性をめぐる課題
普及が進む一方、オーストラリアではeバイク、eスクーターによる事故増加が大きな政策課題になっています。
オーストラリア競争・消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission=ACCC)は2026年、eマイクロモビリティの安全性を製品安全上の優先課題に指定しました。
ACCCが2026年に公表した資料によると、2025年にはクイーンズランド州だけでeバイクまたはeスクーター事故による死亡者が14人に上り、救急外来受診件数も前年から23%増加したとされています。
事故の要因として指摘されているのは、単に車両そのものだけではありません。
- ヘルメット未着用
- 高速度での走行
- 飲酒・薬物の影響下での運転
- 歩行者との混在
- 夜間の視認性不足
- 2人乗り
- スマートフォン使用
- 違法な高出力車両
- 交通ルールへの理解不足
こうした背景から、各州では16歳以上という年齢制限、ヘルメット義務、走行速度制限、携帯電話禁止、飲酒運転規制などを強化する傾向があります。
リチウムイオン電池と火災リスク
eマイクロモビリティに特有の問題が、リチウムイオン電池(Lithium-ion Battery)です。
eバイクやeスクーターでは、小型の車体で長い航続距離を確保するため、高エネルギー密度のバッテリーが使われています。
適切な製品を正しく使用すれば大きな問題はありませんが、低品質セル、互換性のない充電器、衝撃を受けたバッテリー、非純正改造などでは熱暴走による火災リスクがあります。
ACCCは、eバイク・eスクーターなどに使われるリチウムイオン電池について、火災が増加傾向にあり、発生すると急速に燃え広がり有毒な煙を発生させる可能性があると警告しています。
2026年から全国的な製品安全基準づくりへ
2026年5月、オーストラリア政府はeマイクロモビリティ製品の安全性を改善するため、ACCCが全国一貫の製品安全基準を策定する取り組みを開始しました。
最初の重点分野はeバイクで、その後eスクーター、eスケートボードなどへ広げる方針です。
検討対象には、モーター出力、最高速度、バッテリー安全性、消費者への表示などが含まれています。
ACCC Product Safety:e-micromobility devices
高出力・違法車両の問題
現在のオーストラリアで最も大きな課題の一つが、合法なeバイクやeスクーターに見える高出力車両です。
オンラインショップや海外通販では、1,000Wを超えるモーター、40~60km/hの最高速度、アクセルだけで走行できる車両などが販売されています。
私有地で利用すること自体は可能な場合がありますが、州法上のeバイク・PMD基準を超えれば、公共道路や歩道では使用できません。
特に問題なのは、こうした車両が法律上の自転車ではなく「モーター車両」と判断される一方、オーストラリアン・デザイン・ルール(Australian Design Rules)などを満たさず、オートバイとしても登録できないケースです。
その結果、利用者が無登録、無保険、無免許のモーター車両を運転している扱いになることがあります。
クイーンズランド州では2026年7月から、違法な高出力車などに対する警察の検査・押収権限を強化し、基準に適合しない車両を「Prohibited Bike」として規制する制度を導入しました。
配達サービスとマイクロモビリティ
eバイクの普及を語るうえで欠かせないのが、フードデリバリーなどのギグ・エコノミーです。
都市部では、自動車より駐車しやすく、燃料費もかからないeバイクが配達業務に適しており、長時間走行できる大容量バッテリーやカーゴ型eバイクの需要が高まっています。
一方で、業務利用では一般利用以上に走行距離が長くなり、バッテリーの充電回数も増えます。
安価な互換バッテリーの使用や、複数台を室内で同時充電することによる火災リスクも指摘されています。
また、配達業務のために速度制限を解除したり、高出力化したeバイクを使用する問題もあり、今後はプラットフォーム事業者、車両販売者、配達員それぞれの責任が議論される可能性があります。
環境面でのメリットと課題
マイクロモビリティは、自動車より小さく、使用時のエネルギー消費も少ないため、都市交通の脱炭素化に役立つ可能性があります。
自動車の短距離利用を置き換えられる
数km程度の移動をガソリン車からeバイクやeスクーターへ置き換えれば、直接的な燃料消費や排気ガスを減らすことができます。
公共交通との組み合わせ
駅までの移動を便利にすることで、自家用車ではなく鉄道やバスを選びやすくなる可能性があります。
ただし「完全に環境負荷ゼロ」ではない
車両製造、リチウムイオン電池、充電、回収、修理、廃棄、シェア車両の再配置などにもエネルギーと資源が必要です。
特にシェア型では、車両寿命が短い、回収・再配置のために自動車を使うといった運用が環境効果を弱める可能性があります。
そのためマイクロモビリティの環境価値は、単に「電動だからエコ」ではなく、どの交通手段を置き換えたか、車両をどれだけ長期間使用できるかで評価する必要があります。
今後のオーストラリアのマイクロモビリティ
オーストラリアのマイクロモビリティ政策は、2026年時点でもまだ完成形とは言えません。
今後は、次の5つが大きなテーマになると考えられます。
1.州ごとの規制差をどこまで縮めるか
ニューサウスウェールズ州では私有eスクーターが原則禁止、ビクトリア州や南オーストラリア州では合法、クイーンズランド州では運転免許が必要という現在の状況は、利用者にも販売者にも分かりにくいものです。
NTCによるモデルルールの見直しを通じ、今後さらに共通化が進む可能性があります。
2.製品安全基準の全国統一
ACCCが2026年から進めている全国共通基準は、今後の市場に大きな影響を与える可能性があります。
特にeバイクでは、モーター出力、最高速度、リチウムイオン電池、充電器、表示ラベルなどの統一が期待されています。
3.インフラ整備
安全な自転車レーン、交差点、駐車スペースが増えなければ、車両だけ増えても歩行者・自動車との衝突問題は解消できません。
4.事故時の補償
車両登録も強制保険もないマイクロモビリティで、重い人身事故が起きた時に誰がどこまで補償するかは引き続き課題です。
5.「自転車」と「小型オートバイ」の境界線
電動モーターとバッテリー性能が向上するにつれ、外見は自転車でも性能は原付や小型オートバイに近い車両が増えています。
今後の制度では、ペダルの有無だけでなく、実際の出力、最高速度、車重、安全装備などをより厳密に管理する方向へ進む可能性があります。
マイクロモビリティは一時的な流行ではなく、自動車、公共交通、自転車、徒歩の間を埋める新しい交通カテゴリーとしてオーストラリアの都市交通に定着しつつあります。
その一方で、普及の速さに法律、保険、インフラ、製品安全が追い付いていない部分もあり、2026年は制度が大きく再編され始めた転換期と見ることができます。
オーストラリアのマイクロモビリティに関するよくある質問(FAQ)
広義では自転車、eバイク、eスクーター、eスケートボード、eユニサイクル、カーゴバイクなど、小型で短距離移動に使われる交通手段を指します。ただし法律上のPersonal Mobility Deviceの定義は州によって異なり、通常eバイクはPMDではなく自転車として扱われます。
いいえ。2026年9月現在、ニューサウスウェールズ州では私有eスクーターを道路、歩道、自転車道などで使用することは原則できません。一方、ビクトリア州、クイーンズランド州、西オーストラリア州、南オーストラリア州、タスマニア州、ACTなどでは条件付きで合法です。
州法に適合したPersonal Mobility Deviceであれば、通常は車のようなRegoやナンバープレートは必要ありません。ただし基準を超える高出力・高速車両はモーター車両とみなされ、無登録車として違法になる場合があります。
合法なeスクーターやeバイクには、一般に自動車のCTPのような強制保険制度はありません。シェア事業者は自治体との契約条件として保険を求められる場合がありますが、私有車利用者には任意保険しかないことが一般的です。
州によって異なります。多くの州では不要ですが、クイーンズランド州では2026年8月31日から、原則16歳以上かつLearnerを含む有効な運転免許が必要になりました。
一般的な公道用eバイクとしては認められないケースが多くなります。多くの州では250W・25km/hを中心とするEPAC基準が使われています。基準を超える車両はモーター車両扱いとなり、登録できなければ公共の道路や歩道では使用できません。
道路交通ルールが完全に全国統一されるかは未定ですが、NTCはPersonal Mobility Deviceに関するモデルルールを見直しており、ACCCも2026年からeバイクを皮切りに全国共通の製品安全基準づくりを進めています。少なくとも製品安全面では共通化が進む方向です。
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