オーストラリアのスーパーアニュエーション払い戻し完全ガイド|DASP申請方法・65%の税金・帰国後の手続き

オーストラリアでワーキングホリデーを終え、日本へ帰国する際に忘れずに確認しておきたいのが、スーパーアニュエーションの払い戻しです。
オーストラリアで働いていた方は、給料とは別に、雇用主がスーパーアニュエーション(Superannuation)と呼ばれる退職年金を積み立てている場合があります。
2026年10月現在、雇用主の法定拠出率は原則12%です。
この退職年金は通常、一定の退職年齢などに達するまで引き出せません。しかし、ワーキングホリデーや学生ビザなどで一時的にオーストラリアに滞在していた外国人には、帰国後に払い戻しを受けられる制度があります。
それが、DASP(Departing Australia Superannuation Payment)です。
対象となる方は、オーストラリアを出国し、ビザが失効するなどの条件を満たせば、積み立てた退職年金を一括で受け取ることができます。
ただし、ここで気になるのが税金です。
ワーキングホリデー渡航者のDASPには、課税対象となる部分に原則65%という高い税率が適用されます。
例えば、DASPの支払対象額がA$4,000で、その全額が65%の課税対象であれば、税引後に受け取れるのはA$1,400です。
積み立てられた金額が、そのまま全額戻ってくるわけではありません。
また、DASPはオーストラリア滞在中に申請を完了できるものではなく、帰国後もビザが有効な場合には、期限まで待つか、所定のビザ取消手続きを検討する必要があります。
この記事では、ワーキングホリデーや留学などでオーストラリアに滞在した方を対象に、DASPの申請条件、準備する情報、ATOのオンライン申請方法、65%の税金、銀行口座への受け取り、申請後の確認方法まで詳しく説明します。
2026年10月時点のオーストラリア税務局の公式情報をもとに、実際に申請する際に役立つ内容をまとめました。


- DASPとは?スーパーアニュエーションの払い戻し制度
- DASPを申請できる人・できない人
- いつ申請できる?帰国とビザ失効の関係
- 帰国前に準備しておきたい情報と書類
- 自分のスーパー基金と残高を確認する方法
- DASPのオンライン申請方法を順番に解説
- オンラインで申請できない場合・書面申請の注意点
- DASPの税金はなぜ65%?通常の税率との違い
- 実際にいくら戻る?残高別の手取り額を計算
- 払い戻し金は日本の銀行口座で受け取れる?
- 申請から入金まで何日かかる?進捗の確認方法
- 帰国後6か月以上放置するとどうなる?
- 学生ビザや別のビザでも働いた場合の65%税率
- DASPとタックスリターンは別の手続き
- 申請時によくあるトラブルと対処方法
- よくある質問
DASPとは?スーパーアニュエーションの払い戻し制度
DASPは、デパーティング・オーストラリア・スーパーアニュエーション・ペイメント(Departing Australia Superannuation Payment)の略です。
オーストラリアで一時滞在ビザを持って働いた人が、一定の条件を満たして出国した後、積み立てられたスーパーアニュエーションを受け取る制度です。
スーパーアニュエーションの基本的な仕組みについては、前記事「オーストラリアのスーパーアニュエーションとは?ワーホリ・留学生の退職年金12%と残高確認・帰国時の注意点」で詳しく説明しています。
ここでは、払い戻し手続きに必要な内容を中心に説明します。
通常は退職するだけでは引き出せない
オーストラリア人や永住者が仕事を退職しても、それだけでスーパーアニュエーションを自由に引き出せるわけではありません。
通常は、退職年齢など法律で定められた条件を満たす必要があります。
一方、一定の一時滞在ビザで働いていた外国人については、オーストラリアを出国してビザが失効するなどの条件を満たせば、DASPを申請できます。
DASPは年金の全額返金制度ではない
払い戻されるのは、スーパー基金に残っている資金から所定の税金を差し引いた金額です。
基金では、雇用主の拠出金に対する税金、管理手数料、保険料、運用損益などが反映されます。
そのため、雇用主が過去に支払ったスーパー拠出金の合計額と、DASPの申請時の口座残高は一致しない場合があります。
さらに、DASPの支払時には別途税金が源泉徴収されます。
DASPの申請は無料でできる
オーストラリア税務局(Australian Taxation Office/ATO)が提供している公式オンライン申請システムは無料で利用できます。
民間の申請代行会社へ依頼する必要はありません。
ただし、書面申請で必要な移民関連の証明書や、スーパー基金が求める本人確認書類の認証などには、別途費用が発生する場合があります。
DASPを申請できる人・できない人
DASPは、オーストラリアで働いたすべての外国人が利用できる制度ではありません。
主に、一定の一時滞在ビザで働き、その後オーストラリアを出国した人を対象としています。
DASPを申請するための主な条件
- 対象となるオーストラリアの一時滞在ビザを保有していた
- オーストラリアを出国している
- 対象となるビザが失効、または取り消されている
- 現在、有効なオーストラリアのビザを保有していない
- オーストラリア国籍や永住権など、対象外となる資格を持っていない
- DASPの対象となるスーパーアニュエーションが残っている
ワーキングホリデービザ417、ワーク・アンド・ホリデービザ462の渡航者は、条件を満たせばDASPの対象になります。
また、学生ビザ500など、対象となる一時滞在ビザで働いていた人も申請できる場合があります。
| 滞在・ビザの状況 | DASPの一般的な取り扱い |
|---|---|
| 417ビザで働き、帰国後にビザが失効 | 条件を満たせば申請可能 |
| 462ビザで働き、帰国後にビザが失効 | 条件を満たせば申請可能 |
| 学生ビザで働き、帰国後にビザが失効 | 条件を満たせば申請可能 |
| 帰国したが、ビザがまだ有効 | 通常、まだ正式申請できない |
| まだオーストラリアに滞在中 | 準備・保存は可能だが正式申請できない |
| オーストラリアの永住者 | 通常DASP対象外 |
| オーストラリア国籍者 | DASP対象外 |
| ニュージーランド国籍者 | 原則DASP対象外 |
※現在のビザの有無や、過去に保有したビザの種類などによって個別の判断が必要になります。
税務上の居住者区分とは別
日本人ワーホリ渡航者の中には、所得税のタックスリターンで、税務上のオーストラリア居住者に該当する人もいます。
しかし、所得税における居住者判定と、DASPの申請資格は別の仕組みです。
所得税で居住者として申告したからといって、それだけでDASPの対象外になるわけではありません。
DASPは、主に移民法上のビザや出国状況などに基づいて判定されます。
いつ申請できる?帰国とビザ失効の関係
DASPで最も間違えやすいのが、申請できるタイミングです。
重要なのは、オーストラリアから出国していることと、対象ビザがすでに失効または取り消されていることの両方が必要という点です。
帰国しただけでは申請できない場合がある
例えば、ワーキングホリデービザが2027年6月30日まで有効で、2027年3月31日に日本へ帰国したとします。
この場合、日本へ帰国した時点では、まだビザが有効です。
そのため、通常はDASPを正式に申請できません。
一方、ビザが2027年6月30日に失効し、その時点でオーストラリア国外にいて、ほかの申請条件も満たしていれば、DASPの正式申請を行えるようになります。
| 日付 | 状況 | 申請 |
|---|---|---|
| 2027年3月31日 | 日本へ帰国。ビザはまだ有効 | 通常、正式申請不可 |
| 2027年6月30日 | ビザの有効期間終了 | 失効の確認が必要 |
| ビザ失効が確認された後 | オーストラリア国外に滞在 | ほかの条件を満たせば申請可能 |
帰国前に申請書を作成しておくことはできる
ATOのDASPオンライン申請システムでは、オーストラリアを出国する前から申請情報を入力し、保存することができます。
ただし、出国前やビザが有効な間は、正式に申請を送信できません。
帰国後、申請資格を満たした時点で、保存していた申請を再開して送信します。
申請に必要な情報を現地にいる間に準備しておけば、帰国後の手続きが楽になるでしょう。
ビザの有効期間が長く残っている場合
すでにオーストラリアを出国していて、ビザがまだ有効な場合は、オーストラリア内務省(Department of Home Affairs)へビザの取消しを申し出る方法もあります。
ただし、ビザを取り消すと、そのビザで再入国することはできなくなります。
また、セカンド・サードワーホリや、ほかのビザを申請する予定がある方は、取消しが今後の渡航計画に与える影響を確認してください。
DASPを早く受け取りたいという理由だけで、十分に確認せずビザを取り消すことはおすすめしません。
公式情報:オーストラリア内務省:ビザの取消手続き
帰国前に準備しておきたい情報と書類
DASPは日本に帰国してからでも申請できます。
ただし、必要な情報が手元になかったり、スーパー基金へログインできなくなったりすると、手続きに時間がかかることがあります。
帰国前に、次の情報を確認して保存しておきましょう。
| 準備するもの | 確認内容 |
|---|---|
| パスポート | 氏名、生年月日、パスポート番号 |
| TFN | オーストラリアの税務番号 |
| ビザ情報 | ビザの種類、有効期限など |
| スーパー基金名 | 加入している基金の正式名称 |
| Member Number | スーパー基金の会員番号 |
| 基金のABN | スーパー基金の事業者番号 |
| スーパー残高 | 現在の口座残高と拠出状況 |
| 給与明細 | 最終給与、スーパーの拠出記録 |
| メールアドレス | 日本帰国後も受信できるもの |
| 銀行口座情報 | 払い戻し金の受取先 |
TFNが分からなくても申請できる?
ATOのDASPオンライン申請では、TFNの入力は任意です。
ただし、TFNを入力すると、本人のスーパー基金を検索しやすくなるなどのメリットがあります。
そのため、TFNが分かる場合は準備しておくことをおすすめします。
パスポートを更新している場合
ワーキングホリデーで入国した際と、DASP申請時のパスポートが異なる場合は注意してください。
ATOのオンラインシステムは、内務省の情報を利用して出国状況やビザの履歴を確認します。
過去のパスポート番号と現在の登録情報が一致しない場合などは、追加確認が必要になることがあります。
可能であれば、オーストラリア入国時に使用したパスポートの情報も保存しておきましょう。
日本のメールアドレスを登録しておこう
オーストラリアの携帯電話番号や、現地で取得したメールアドレスを帰国時に解約する方もいるかもしれません。
しかし、スーパー基金からの連絡や追加書類の依頼が届かなくなると、手続きが進まなくなる可能性があります。
帰国後も利用できるメールアドレスと連絡先を登録しておきましょう。
自分のスーパー基金と残高を確認する方法
ワーキングホリデー中に複数の職場で働いた場合、スーパー口座が複数作られていることがあります。
例えば、最初にシドニー(Sydney)のカフェ、次にクイーンズランド州(Queensland)の農場、最後にメルボルン(Melbourne)のホテルで働いた場合です。
それぞれの雇用主が異なる基金へスーパーを拠出している可能性があります。
DASPを申請する前に、すべてのスーパー口座を確認しておきましょう。
myGovから確認する
オーストラリア政府のマイガブ(myGov)とATOのオンラインサービスを連携している場合、登録されているスーパー口座を確認できます。
- myGovへログインする
- Australian Taxation Officeを選択する
- Superのメニューへ進む
- 登録されているスーパー基金の一覧を確認する
- 必要に応じて基金名、会員番号、残高などを確認する
ただし、ATOに表示される情報には更新の時間差があります。
最新の残高や取引履歴を確認するには、スーパー基金の公式サイトも利用してください。
DASPオンライン申請システムでも検索できる
DASPの公式オンライン申請システムでは、TFNを入力すると、ATOに報告されているスーパー基金を検索できます。
また、基金の名前やABNなどが分かっている場合には、検索結果に表示されていない基金を追加して申請できる場合があります。
給与明細に書かれている基金名も確認
スーパー基金のログイン情報が分からない場合は、以前の給与明細を確認してみましょう。
基金名やスーパーの拠出額が記載されていることがあります。
必要なら、以前の雇用主へどの基金へ拠出したのか問い合わせる方法もあります。
複数の基金がある場合
DASPは、複数のスーパー基金について申請できます。
ただし、各基金がそれぞれ申請内容を確認し、払い戻し手続きを行います。
そのため、すべての基金から同じ日に送金されるとは限りません。
また、基金によって必要な本人確認書類や送金方法が異なる場合があります。
DASPのオンライン申請方法を順番に解説
ここからは、ATOの公式オンライン申請システムを利用する方法を説明します。
政府のオンライン申請システムを利用すれば、申請代行会社へ料金を支払う必要はありません。
公式申請サイト
ATO公式:DASP Online Application System
申請画面は基本的に英語ですが、必要な情報を事前に準備しておけば、自分で申請を進めることも可能です。
STEP 1.公式申請システムへアクセスする
ATOのDASPオンライン申請ページを開きます。
個人で申請する場合は、本人用の申請手続きを選びます。
登録税理士などの代理人向けとは異なる手続きなので、注意してください。
STEP 2.個人情報を入力する
申請システムでは、次のような情報を入力します。
- 氏名
- 生年月日
- パスポートの発行国
- パスポート番号
- TFN(分かる場合)
- メールアドレス
情報は、パスポートやATOに登録されている内容と一致するように入力してください。
STEP 3.本人確認と申請資格の確認
入力した情報は、オーストラリア内務省のデータと照合されます。
ここで、オーストラリアを出国しているか、ビザが失効しているか、ワーキングホリデービザを保有していたかなどが確認されます。
申請資格が確認されると、次の手続きへ進めます。
まだオーストラリア国内にいる場合や、ビザが有効な場合は、申請を保存することはできますが、正式に送信できません。
STEP 4.再ログイン用の秘密の質問を設定する
申請システムでは、再びアクセスする際の本人確認のため、秘密の質問と回答を設定します。
一度申請を保存し、帰国後に再開する予定がある場合は、この回答を忘れないようにしましょう。
また、再ログインの際には、最初に入力した氏名、生年月日、パスポート番号などを同じ形式で入力する必要があります。
STEP 5.スーパー基金を検索する
TFNを入力している場合、ATOに報告されているスーパー基金を検索できます。
表示された基金名が、自分の加入していた基金と一致するか確認してください。
検索結果に基金が表示されない場合でも、加入先が分かっていれば、基金のABNなどを使って追加できる場合があります。
STEP 6.連絡先とスーパー口座情報を入力する
申請では、日本の住所やメールアドレス、基金の会員番号などを入力します。
基金から追加の確認が必要になった場合、この連絡先に問い合わせが届くことがあります。
日本へ帰国後も確実に連絡を受けられる情報を入力してください。
STEP 7.申請先と受取方法を確認する
スーパーの資金が、現在どこで管理されているかによって、申請先が異なります。
- スーパー基金が資金を管理している場合:そのスーパー基金
- すでにATOへ移管されている場合:ATO
オンライン申請システムでは、両方の申請に対応しています。
ただし、受取方法や必要な確認手続きは、基金とATOで異なる場合があります。
STEP 8.申請内容を確認する
氏名、パスポート情報、連絡先、スーパー基金、会員番号などに誤りがないか確認します。
正式に申請を送信した後は、入力内容をオンラインで自由に変更できないため、送信前の確認が重要です。
STEP 9.申請を送信する
オーストラリアを出国し、ビザが失効または取り消され、その他の資格を満たしていれば、正式に申請を送信できます。
送信すると、申請内容を確認するメールが届きます。
また、該当するスーパー基金やATOにも、申請が通知されます。
STEP 10.必要な追加書類を提出する
申請後、基金によっては追加の本人確認書類や、銀行口座の証明などを求める場合があります。
追加資料が必要な場合は、基金からの案内に従って提出してください。
公式オンライン申請は無料ですが、こうした証明書類の取得や認証に費用がかかる場合があります。
申請時間の目安
ATOの申請システムでは、オンライン申請の所要時間を約30分と案内しています。
ただし、すべての人が30分以内に手続きを終えられるという意味ではありません。
基金が複数ある場合や、本人確認に問題がある場合は、さらに時間がかかることがあります。
オンラインで申請できない場合・書面申請の注意点
DASPのオンライン申請システムで本人確認ができない場合や、特定のスーパー基金へ直接申請したい場合には、書面による申請方法もあります。
ただし、オンライン申請と書面申請では、必要になる証明書類が異なります。
スーパー基金への書面申請
ATOには、スーパー基金へ提出するDASP申請書が用意されています。
この申請書には、本人の情報、基金の情報、過去の雇用先、受取方法などを記入します。
書面申請では、基金へ直接書類を提出します。ATOの書式を使用した場合でも、資金を管理している基金に提出する点に注意してください。
残高A$5,000以上の場合
スーパー基金へ書面で申請する場合、払い戻し対象額がA$5,000以上であれば、通常、内務省が発行する移民資格証明(Certification of Immigration Status)が必要です。
この証明書は、内務省が申請者のビザや出国状況などを確認し、スーパー基金へ情報を提供するものです。
発行に料金がかかる場合があります。
一方、オンライン申請システムでは、内務省の情報を電子的に照合する仕組みがあるため、書面申請とは手続きが異なります。
残高A$5,000未満の場合
書面申請で払い戻し対象額がA$5,000未満の場合には、所定の認証済み書類などを提出する方法が認められる場合があります。
ただし、実際に必要な書類は基金によって異なります。
パスポートの認証コピーや過去のビザ情報などを求められることもあります。
書面申請は帰国前に提出できる?
原則として、正式なDASP申請はオーストラリアから出国した後に行います。
帰国前に書類を準備することはできますが、申請資格を満たす前に送付しても、処理できない場合があります。
書面による申請を考えている場合は、必ず基金の公式案内を確認してください。
DASPの税金はなぜ65%?通常の税率との違い
ワーキングホリデー渡航者のDASPで、特に気になるのが税率です。
2017年7月1日以降に行われるDASPでは、ワーキングホリデー渡航者に対し、通常の一時滞在者とは異なる税率が設けられています。
ワーキングホリデーのDASP税率は、課税対象部分について65%です。
一般の一時滞在者との比較
| DASPの構成部分 | 一般の対象一時滞在者 | ワーホリ対象者 |
|---|---|---|
| 非課税部分(Tax-free Component) | 0% | 0% |
| 課税対象・課税済み部分(Taxed Element) | 35% | 65% |
| 課税対象・未課税部分(Untaxed Element) | 45% | 65% |
ここでいうTaxed Elementは、スーパー基金内ですでに一定の税務処理を受けている部分などを意味します。
一般的な雇用主のスーパー拠出金から形成された残高は、通常、この課税対象のTaxed Elementに含まれます。
一方、本人が税引後の資金から拠出した一定の金額など、法律上の非課税部分がある場合には、DASP税はかかりません。
ただし、ワーキングホリデーで短期間働いただけの一般的なケースでは、口座残高の大部分が課税対象部分となっていることが多いでしょう。
65%は所得税の15%と別の税金
オーストラリアのワーキングホリデーでは、給与所得について最初のA$45,000に15%の基本税率が適用される制度があります。
しかし、これはスーパーアニュエーションのDASP税率とは別です。
給与から15%の所得税が引かれていたからといって、DASPの65%が15%に減額されるわけではありません。
また、日本国籍のワーホリ渡航者が、日豪租税条約によって通常の居住者向け所得税率を適用された場合でも、それだけでDASPの税率が変わるわけではありません。
税金は誰が支払う?
DASPの税金は、通常、払い戻しを行うスーパー基金またはATOが源泉徴収します。
つまり、申請者は、税金を差し引いた後の金額を受け取ります。
原則として、DASPについて別途65%分の税金を振り込む必要はありません。
また、払い戻しを行った機関は、所定のDASP支払明細(DASP Payment Summary)を発行します。
その明細で、支払総額や源泉徴収された税金を確認できます。
65%という税率は高いものですが、ATOの通常のタックスリターンで払い過ぎた所得税として取り戻せる性質のものではありません。
実際にいくら戻る?残高別の手取り額を計算
それでは、DASPで実際にいくら受け取れるのか計算してみましょう。
ここでは、払い戻し対象額の全額が65%課税の対象であると仮定します。
| DASP支払対象額 | 65%の税金 | 税引後受取額 |
|---|---|---|
| A$1,000 | A$650 | A$350 |
| A$2,000 | A$1,300 | A$700 |
| A$3,000 | A$1,950 | A$1,050 |
| A$4,000 | A$2,600 | A$1,400 |
| A$5,000 | A$3,250 | A$1,750 |
| A$8,000 | A$5,200 | A$2,800 |
| A$10,000 | A$6,500 | A$3,500 |
※すべての支払対象額が65%課税部分であるという仮定です。非課税部分がある場合、実際の受取額は異なります。また、送金手数料や為替換算費用などは含めていません。
最初に雇用主が支払った金額からも税金が引かれている
ここで、もうひとつ注意したい点があります。
雇用主がスーパー基金へ拠出する際、通常の課税対象拠出金には基金内で15%の拠出金税がかかります。
その後、DASPで払い戻しを受ける際には、課税対象の残高へさらに65%のDASP税が適用されます。
例えば、雇用主がA$1,000を拠出した場合を考えてみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 雇用主のスーパー拠出金 | A$1,000.00 |
| 拠出金税15% | -A$150.00 |
| 基金内に残る金額 | A$850.00 |
| DASP税65% | -A$552.50 |
| 最終的な受取額 | A$297.50 |
これは、運用損益、手数料、保険料などが一切ないと仮定した単純な計算です。
実際の口座残高は基金の運用によって増減し、別途管理手数料などが差し引かれる場合があります。
ただ、この例を見ると、最初の雇用主拠出金A$1,000に対して、最終的な受取額がA$297.50になる可能性があることが分かります。
つまり、通常の課税対象拠出金については、単に最初の拠出金の35%が手元に残るという計算ではありません。
申請時の残高で判断する
DASPの受取額を試算するときは、給与明細に書かれた過去のスーパー拠出金の合計ではなく、基金の現在の残高と支払対象部分を確認してください。
そのうえで、実際に適用されるDASP税率を計算する必要があります。
払い戻し金は日本の銀行口座で受け取れる?
ワーキングホリデーを終えて日本へ帰国する場合、DASPの払い戻し金をどの銀行口座で受け取るかも重要です。
この点は、スーパー基金が資金を管理している場合と、ATOが資金を管理している場合で異なります。
スーパー基金が資金を管理している場合
スーパー基金によっては、海外の銀行口座への送金に対応している場合があります。
ただし、すべての基金が日本の銀行口座への送金に対応しているわけではありません。
例えば、次のような受取方法が考えられます。
- 本人名義のオーストラリア国内銀行口座への振込
- 基金が対応している場合の海外銀行口座への送金
- 小切手など、基金が提供している受取方法
実際に利用できる方法は基金の規則によって異なります。
ATOが資金を管理している場合
すでにスーパー基金からATOへ資金が移管されている場合、DASPの受取方法に制限があります。
ATOが管理しているスーパーのDASPでは、基本的に次の方法が案内されています。
- 本人名義のオーストラリア国内銀行口座への振込
- 小切手による支払い
ATOが管理するスーパーでは、日本の銀行口座への直接の電子送金が、通常のDASP受取方法として提供されているわけではありません。
友人のオーストラリア銀行口座でもよい?
原則として、自分と無関係な友人の口座を振込先に指定することはできません。
ATOから銀行振込で受け取る場合は、通常、本人名義のオーストラリア国内銀行口座が必要です。
そのため、帰国前に銀行口座を閉鎖する予定の方は注意してください。
日本円への両替にも費用がかかる
DASPをオーストラリアの銀行口座で受け取った後、日本へ送金する場合には、送金手数料や為替換算コストなどが発生することがあります。
また、海外送金に対応するサービスによって、最終的に日本円で受け取れる金額は異なります。
DASPの65%の税金だけでなく、銀行手数料や送金費用についても考えておくとよいでしょう。
帰国前に銀行口座を解約しない方がよい?
DASPをオーストラリアの銀行口座で受け取る予定があるなら、払い戻しが完了するまで口座を残しておく方が便利な場合があります。
ただし、帰国後の口座維持が可能か、海外居住者の取り扱いや月額手数料がどうなるかは銀行によって異なります。
帰国前に銀行へ確認しておきましょう。
申請から入金まで何日かかる?進捗の確認方法
DASPを申請した後、どのくらいで払い戻し金が届くのでしょうか。
ATOの公式オンライン申請システムでは、一般的に、スーパー基金またはATOが申請処理に必要な情報をすべて受け取ってから28日以内に支払いを受けられると案内しています。
ただし、これは通常の処理期間の目安です。
申請から必ず28日以内に入金されるという保証ではありません。
処理が遅れる主な理由
- 本人確認書類が不足している
- パスポートの情報と登録内容が一致しない
- 内務省のビザ情報が確認できない
- スーパー基金の会員番号が誤っている
- 銀行口座情報に問題がある
- 追加の書類が必要になっている
- 申請時点ではビザがまだ有効だった
申請状況はどこで確認できる?
DASPのオンライン申請システムに再びログインすると、過去に提出した申請情報を確認できます。
ただし、公式システムの案内では、提出済みの申請が実際に処理完了したかどうかは表示されません。
進捗状況を確認したい場合は、申請先へ直接問い合わせる必要があります。
| 申請先 | 問い合わせ先 |
|---|---|
| スーパー基金が管理する資金 | 該当するスーパー基金 |
| ATOが管理する資金 | ATO |
追加書類の依頼が来ていないか確認する
申請後は、登録したメールアドレスに基金から連絡が届いていないか確認してください。
迷惑メールフォルダーに入っている可能性もあります。
必要な書類が提出されていない場合、処理が進まないことがあります。
DASP Payment Summaryを保存する
払い戻しが完了すると、基金またはATOから支払明細が発行されます。
DASPの支払明細には、支払額や源泉徴収された税金などが記載されます。
払い戻し金額が正しいか確認するためにも、明細は保存しておきましょう。
帰国後6か月以上放置するとどうなる?
ワーキングホリデーを終えて帰国したものの、スーパーアニュエーションの存在を忘れていたという方もいるでしょう。
あるいは、ビザが失効してから何年も経っている場合もあるかもしれません。
そのような場合でも、通常、払い戻しの権利がすぐになくなるわけではありません。
未請求のスーパーはATOへ移管される場合がある
オーストラリアでは、対象となる一時滞在者が出国し、ビザが失効した後もスーパーを請求しなかった場合、基金がその資金をATOへ移管する仕組みがあります。
法律上、出国とビザ失効の遅い方から少なくとも6か月が経過し、その他の条件を満たす元一時滞在者のスーパーが対象になります。
ただし、6か月経ったその日に必ず資金が移管されるという意味ではありません。
ATOが対象者の情報を確認し、基金への通知や資金移管の手続きが行われます。
ATOへ移管されるとどうなる?
スーパー基金ではなく、ATOが未請求のスーパーを管理することになります。
この場合、DASPの申請先はATOになります。
また、ATOが管理している資金については、受取方法も基金が直接支払う場合とは異なります。
何年も経っていても請求できる?
はい。申請資格を満たしていれば、帰国から長期間が経過していても請求できる場合があります。
ただし、以前のパスポート、ビザ、スーパー基金などの情報が必要になることがあります。
また、古い記録の場合、オンラインだけでは情報を確認できず、追加の手続きが必要になることもあります。
スーパー基金が分からない場合
ATOのDASPオンライン申請システムでは、TFNなどを使って、スーパー基金やATOが保有する資金を検索できる場合があります。
基金名や会員番号が分からない場合でも、まず公式システムで確認してみるとよいでしょう。
ただし、すべての過去の口座を自動的に発見できるとは限りません。
以前の給与明細や雇用先の情報が残っている場合は、あわせて確認してください。
学生ビザや別のビザでも働いた場合の65%税率
DASPの税率について、特に注意が必要なのが、ワーキングホリデー以外のビザでも働いた経験がある方です。
例えば、次のようなケースです。
- 最初は学生ビザで働き、その後ワーキングホリデーへ変更した
- ワーキングホリデーを終えて、別の就労ビザで働いた
- ワーキングホリデーと学生ビザの両方で働いた
- 複数のスーパー基金へ拠出されていた
こうした場合、単に最後に保有していたビザだけで、DASP税率が決まるわけではありません。
ワーホリ中の拠出金が含まれているかが重要
ATOの公式案内によると、ワーキングホリデービザ417または462を保有していた場合、DASPの税率は、基金ごとに判断されます。
そして、DASPの支払額に、ワーキングホリデー期間中のスーパー拠出金に由来する金額が含まれている場合、原則として、その基金からのDASP全体の課税対象部分に65%が適用されます。
例えば、同じスーパー基金に次のような拠出金が入っていたとします。
| 勤務時のビザ | スーパー拠出金の例 |
|---|---|
| ワーキングホリデー417 | A$2,000 |
| その後の別の一時就労ビザ | A$4,000 |
| 拠出金合計 | A$6,000 |
この基金のDASPに、ワーキングホリデー期間中の拠出金に由来する資金が含まれている場合、原則としてDASP全体の課税対象部分に65%の税率が適用されます。
ワーホリ期間中の拠出分だけ65%、別のビザで働いた期間の分だけ35%というように、同じ基金の支払額を単純に期間で分けるわけではありません。
※上記のA$6,000は拠出金の例であり、基金の実際の支払残高ではありません。
別の基金にワーホリの拠出金がない場合
一方、ワーキングホリデービザを過去に保有していたとしても、あるスーパー基金のDASPにワーホリ期間中の拠出金に由来する資金が含まれていなければ、その基金については通常のDASP税率が適用される場合があります。
例えば、ワーホリを経験した後に別のビザへ変更し、その後に新しく加入した基金が、ワーホリ期間中の拠出金を一切含んでいない場合です。
ただし、過去にほかの基金から資金を移管している場合などは、取り扱いが複雑になることがあります。
最終的な税率は、それぞれのスーパー基金が保有する情報とATOの規則に基づいて判断します。
複数のビザやスーパー基金を利用していた方は、DASPの申請前に各基金の加入履歴と拠出金の履歴を確認しておきましょう。
DASPとタックスリターンは別の手続き
DASPの申請と混同されやすいのが、オーストラリアのタックスリターンです。
しかし、この2つは別の手続きです。
| 項目 | タックスリターン | DASP |
|---|---|---|
| 目的 | 所得税の精算 | 退職年金の払い戻し |
| 主な対象 | 給与・事業所得など | スーパー基金の資金 |
| 申請時期 | 原則税務年度終了後 | 出国後、ビザ失効などの条件を満たしてから |
| 主な手続き先 | ATO | スーパー基金またはATO |
| 税金 | 所得に応じた所得税率 | DASP独自の源泉徴収税率 |
DASPは個人所得税の申告書へ記載する?
通常、DASPとして受け取った金額と、その支払時に源泉徴収されたDASP税は、オーストラリアの個人所得税のタックスリターンには記載しません。
DASPには独自の源泉徴収税制があり、一般の給与所得などとは別に取り扱われるためです。
DASPの65%をタックスリターンで取り戻せる?
通常、取り戻せません。
ただし、スーパー基金やATOが誤った税率を適用していた場合には、別途、DASPの税金について返還・訂正を求める手続きがあります。
例えば、本来は通常のDASP税率が適用される基金に対して、誤ってワーホリの65%税率が適用された場合などです。
その場合は、支払いを行った基金やATOへ確認してください。
日本での税務申告は別途確認する
日本へ帰国し、日本の税務上の居住者としてDASPを受け取る場合には、日本側での所得区分や申告義務についても確認が必要です。
オーストラリアで65%のDASP税が源泉徴収されたからといって、日本で必ず非課税になるという意味ではありません。
日本側の課税関係は、受け取った資金の性質、受取時の居住者区分などによって判断が必要です。
金額が大きい場合などは、国際税務に詳しい税理士へ確認しておくと安心です。
オーストラリアのタックスリターンについては、関連記事「オーストラリアのワーホリ・留学生のタックスリターン|申告時期・方法・税金の還付を解説」を参考にしてください。
申請時によくあるトラブルと対処方法
DASPの申請では、本人確認やスーパー基金の情報に関するトラブルが起こることがあります。
よくある問題と確認方法を整理しました。
1.申請システムでビザが有効と表示される
オーストラリアを出国していても、まだビザが有効な場合には、正式申請を送信できません。
ビザの失効を待つか、今後の渡航予定を確認したうえで、必要に応じて内務省へ相談してください。
2.パスポート情報が一致しない
入国時からパスポートを更新している場合や、入力した氏名が登録情報と異なる場合があります。
パスポート番号、氏名、生年月日などを確認してください。
内務省の記録に問題がある場合は、必要な登録情報の更新について確認しましょう。
3.スーパー基金が検索結果に表示されない
TFNを入力しても、すべての基金が必ず検索結果に表示されるわけではありません。
以前の給与明細や基金の会員番号を確認し、必要に応じて基金を追加して申請してください。
4.スーパー基金の会員番号が分からない
基金から送られたメールや過去の年次報告書、給与明細などを確認しましょう。
それでも分からない場合は、本人確認を行ったうえで、基金へ問い合わせる方法があります。
5.最終給与のスーパーがまだ入金されていない
2026年7月1日からPayday Super制度が導入され、雇用主は原則として給与支払日ごとにスーパーを拠出する必要があります。
ただし、一般的には給与支払日から7営業日以内に基金へ到達すればよく、新規従業員の最初の拠出などには例外があります。
給与明細に金額が書かれていても、基金への入金がまだ反映されていない場合があります。
帰国直前には、最後の給与とスーパーの入金状況を確認しておきましょう。
6.申請しても28日以内に入金されない
まず、基金から追加書類の依頼が届いていないか確認します。
必要な情報をすべて提出しているのに処理が進まない場合は、申請先の基金またはATOへ直接問い合わせてください。
7.税引後の受取額が予想より少ない
基金のDASP Payment Summaryを確認してください。
65%の税金のほか、基金内の手数料、運用損益、銀行送金費用などが関係している場合があります。
また、以前の給与明細に記載されたスーパーの合計額と、現在の基金残高が一致するとは限りません。
8.代行業者から高額な手数料を請求された
ATOの公式オンライン申請システムは無料です。
代行会社へ依頼する場合でも、その会社が行う業務と手数料を確認してください。
また、代理申請を行う業者には、登録税理士など所定の資格や登録が必要になる場合があります。
DASPの申請を代行すると称する業者へ、パスポート情報や銀行口座情報を安易に送らないようにしましょう。
DASPの申請と税金に関するよくある質問
まとめ|DASPは帰国前の準備とビザ失効の確認が重要
オーストラリアのDASPは、ワーキングホリデーや留学などで働いた人が、帰国後にスーパーアニュエーションの払い戻しを受けるための制度です。
対象となる方は、オーストラリアを出国し、ビザが失効または取り消されるなどの条件を満たせば申請できます。
ATOの公式オンライン申請システムを利用すれば、自分で無料で申請を進められます。
ただし、帰国しただけでは申請できず、ビザがまだ有効な場合には、失効を待つか、必要に応じて内務省の取消手続きを検討することになります。
また、ワーキングホリデー渡航者のDASPには、課税対象部分に原則65%という税率が適用されます。
そのため、口座残高がそのまま全額戻るわけではありません。
さらに、スーパー基金が管理する資金と、ATOへ移管された資金では、申請先や受取方法が異なる場合があります。
特に、日本の銀行口座への送金を希望する方は、資金がどこで管理されているかを確認してください。
帰国前には、スーパー基金名、会員番号、TFN、パスポート情報、銀行口座、最終給与に対応するスーパーの入金状況などを整理しておくと安心です。
申請後は、基金やATOから届く連絡を確認し、追加の書類が必要な場合は速やかに対応しましょう。
また、DASPの税金は通常のタックスリターンとは別の制度です。給与所得の還付手続きと混同しないようにしてください。
DASPをスムーズに申請するためには、帰国前にスーパーの口座情報を確認し、出国後のビザの状態と受取方法を把握しておくことが大切です。
ワーキングホリデーを終えてから何年も経っている場合でも、条件を満たせば請求できることがあります。
以前オーストラリアで働いていた方も、スーパーアニュエーションが残っていないか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
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