オーストラリア発の発明10選|Wi-Fi・ブラックボックスなど世界を変えた技術

オーストラリアの発明と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。

回転式物干し台、ワインの箱、サーフィン用品――そんな「オーストラリアらしいもの」を想像する人もいるかもしれません。

ところが実際には、私たちが毎日のように使っている通信技術から、航空安全、医療、紙幣、太陽光発電まで、世界中の生活を変えた技術の中にオーストラリア生まれのものが数多くあります。

代表的なのがWi-Fiの基礎となった無線LAN技術です。

さらに、航空事故調査に欠かせないブラックボックス、重度の難聴の人に音を届ける多チャンネル型人工内耳、現在では世界各国で使われているポリマー紙幣なども、オーストラリアの研究開発と深く結びついています。

Wi-Fiって、オーストラリア人が一人で発明したんですか?
そこは少し注意が必要です。Wi-Fi全体を一人がゼロから発明したわけではありません。オーストラリアのCSIRO研究チームが開発・特許化した高速無線LAN技術が、現在のWi-Fiを支える重要な技術になりました。

「世界初」や「○○を発明した国」という話は、後からわかりやすく単純化されていることもあります。

そこでこの記事では、そうした言い切りをできるだけ避け、オーストラリアで実際に開発された技術や、世界的な普及につながった研究成果を中心に10件紹介します。

目次:オーストラリア発の発明10選(クリックで開閉)
  1. 実は「発明大国」でもあるオーストラリア
  2. 「オーストラリアが発明」の意味は意外に複雑
  3. 今回紹介する10の発明・技術
  4. 1. Wi-Fiの基礎となった高速無線LAN技術
  5. 天文学の研究から生まれたWi-Fi技術
  6. 発明したのは一人ではなくCSIROのチーム
  7. 2. 航空機のブラックボックス
  8. デビッド・ウォーレンのひらめき
  9. なぜ「ブラックボックス」なのにオレンジ色?
  10. 3. 多チャンネル型人工内耳
  11. グレアム・クラークと「聞こえ」の研究
  12. 4. ポリマー紙幣
  13. 偽札対策から生まれたプラスチック紙幣
  14. 5. HPVワクチンにつながった技術
  15. イアン・フレーザーとジャン・ジョウ
  16. 6. PERC型太陽電池
  17. マーティン・グリーンとニューサウスウェールズ大学
  18. 7. 原子吸光分析法
  19. 「測るものが逆では?」から始まった発見
  20. 8. スプレー・オン・スキン
  21. フィオナ・ウッドとマリー・ストーナー
  22. 9. グレースケール超音波診断技術
  23. シドニーで進化した医療用超音波
  24. 10. 実用的な機械式冷凍技術
  25. 新聞人でもあったジェームズ・ハリソン
  26. なぜオーストラリアから発明が生まれた?
  27. CSIROという巨大な研究機関
  28. 大学から世界へ広がった技術も多い
  29. 日本人の生活にもオーストラリア発の技術
  30. 旅行中に「オーストラリアの科学」を感じられる場所
  31. 身近な技術から見るもうひとつのオーストラリア
  32. よくある質問




実は「発明大国」でもあるオーストラリア

オーストラリアというと、鉱業、農業、観光といった産業の印象が強く、「科学技術の国」というイメージは日本ではそれほど強くないかもしれません。

しかし実際には、オーストラリア国立科学機関であるCSIROをはじめ、大学、病院、国防研究機関などから世界的な技術が数多く生まれています。

特に興味深いのは、研究室の中だけで終わらず、実際に世界中で使われる技術へ成長したものが多いことです。

スマートフォンをWi-Fiにつなぐ。

飛行機に乗る。

病院で超音波検査を受ける。

紙幣を手にする。

太陽光パネルから電気をつくる。

こうした日常の中にも、オーストラリアで生まれた技術が入り込んでいます。

「オーストラリアが発明」の意味は意外に複雑

最初に知っておきたいのは、発明の歴史は国別ランキングのようにきれいに分けられるものではないということです。

ひとつの技術が完成するまでには、世界各地の研究者による先行研究があります。

例えばWi-Fiも、無線通信そのものをオーストラリアが発明したわけではありません。

人工内耳も、それ以前から世界各国で電気刺激によって聴覚を補う研究が行われていました。

冷凍技術も同じです。

そのうえで、「実用化の決定的な技術を生み出した」「従来できなかったことを可能にした」「その後世界で広く使われた」という点に注目すると、オーストラリアの存在感が見えてきます。

今回紹介する10の発明・技術

発明・技術 主な開発地・機関
高速無線LAN技術 CSIRO
ブラックボックス メルボルン/航空研究所
多チャンネル型人工内耳 メルボルン大学
ポリマー紙幣 オーストラリア準備銀行・CSIRO
HPVワクチンの基礎技術 クイーンズランド大学
PERC型太陽電池 ニューサウスウェールズ大学
原子吸光分析法 CSIRO
スプレー・オン・スキン 西オーストラリア州
グレースケール超音波診断技術 シドニー/超音波研究チーム
機械式冷凍技術の実用化 ジーロング

1. Wi-Fiの基礎となった高速無線LAN技術

オーストラリア発の技術として、現在もっとも身近なのはWi-Fiでしょう。

スマートフォン、パソコン、テレビ、ゲーム機、プリンター、カメラなど、家庭の中だけでもWi-Fiにつながる機器は珍しくなくなりました。

その高速無線通信を可能にした重要な技術のひとつが、オーストラリア連邦科学産業研究機構、CSIRO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation)の研究チームによって開発されました。

CSIROによると、この技術は現在150億台を超える機器に組み込まれています。

天文学の研究から生まれたWi-Fi技術

面白いのは、この技術のルーツがインターネット研究だけではなく、電波天文学にもあったことです。

室内で高速無線通信を行う場合、大きな問題になるのが電波の反射です。

壁、家具、床などに当たった電波がさまざまな経路を通って受信機へ届くと、信号が乱れてしまいます。

CSIROの研究者たちは、電波天文学や無線工学で培った知識と高度な数学を利用して、この問題を克服する技術を開発しました。

その技術は特許化され、後の高速無線LAN、そして現在のWi-Fiを支える重要な基盤になりました。

発明したのは一人ではなくCSIROのチーム

「Wi-Fiを発明したオーストラリア人」としてジョン・オサリバン(John O’Sullivan)の名前だけが紹介されることがあります。

しかし実際にはチームによる研究でした。

中心となったのは、ジョン・オサリバン、テリー・パーシバル(Terry Percival)、ディート・オストリー(Diet Ostry)、グラハム・ダニエルズ(Graham Daniels)、ジョン・ディーン(John Deane)らです。

したがって「オーストラリア人がWi-Fiそのものを一人で発明した」というより、CSIROの研究チームが現代Wi-Fiの高速通信を支える重要技術を発明したと表現するのが正確です。

2. 航空機のブラックボックス

航空事故のニュースで必ずといっていいほど登場するのが「ブラックボックス」です。

事故機の飛行状態や操縦室の音声などを記録し、事故原因を調べるために使われます。

その原型を開発したのが、オーストラリアの科学者デビッド・ウォーレン(David Warren)でした。

ウォーレンは1950年代、メルボルンのフィッシャーマンズ・ベンド(Fishermans Bend)にあった航空研究所で働いていました。

デビッド・ウォーレンのひらめき

当時、世界初のジェット旅客機コメットで原因不明の墜落事故が相次いでいました。

事故調査に関わっていたウォーレンは、操縦室で何が話され、航空機がどのような状態だったのかを事故後に確認できれば、原因究明に役立つと考えました。

そこで音声と飛行データを継続的に記録する装置を考案します。

最初は周囲からほとんど関心を持たれませんでした。

それでもウォーレンは試作機を製作し、1957年には実際に動作するデモ機が完成します。

1960年にクイーンズランド州マッカイ付近で旅客機事故が発生した後、事故調査で記録装置の搭載が強く推奨され、オーストラリアは操縦室音声記録を義務化した最初の国になりました。

現在では、改良された飛行記録装置が世界中の旅客機で使われています。

なぜ「ブラックボックス」なのにオレンジ色?

名前はブラックボックスですが、現在の航空機に搭載される記録装置の外装は一般に明るいオレンジ色です。

これは墜落現場などで発見しやすくするためです。

「ブラックボックス」という言葉は装置の俗称として定着したもので、外装の色を意味しているわけではありません。



3. 多チャンネル型人工内耳

オーストラリアを代表する医療技術のひとつが、多チャンネル型人工内耳です。

中心となった人物は、メルボルン大学(University of Melbourne)の耳鼻咽喉科医グレアム・クラーク(Graeme Clark)。

人工内耳は、一般的な補聴器のように単純に音を大きくする装置ではありません。

音を電気信号へ変換し、内耳に入れた電極によって聴神経を刺激します。

グレアム・クラークと「聞こえ」の研究

クラークが聴覚研究を志す背景には、父親の難聴がありました。

1960年代から研究を続け、複数の電極を使って異なる周波数の情報を聴神経へ伝える多チャンネル方式を開発します。

1978年、患者ロッド・サンダース(Rod Saunders)に多チャンネル型人工内耳を埋め込む手術が行われ、大きな成果を上げました。

その後オーストラリア企業ニュークレアス・グループなどとの協力で実用化が進み、コクレア(Cochlear)が誕生します。

現在では世界各地で人工内耳が使われています。

クラークは2026年にも、その長年の功績によって国際的な工学・技術賞を受賞しており、半世紀近く前に始まったオーストラリアの研究が現在の医療につながっています。

4. ポリマー紙幣

オーストラリア旅行で実際に手に取ることができる発明もあります。

それがポリマー紙幣です。

日本の紙幣とは手触りが違い、水にぬれても破れにくく、透明な窓まで入っています。

オーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia/RBA)とCSIROが共同で開発しました。

偽札対策から生まれたプラスチック紙幣

開発のきっかけは偽札でした。

1966年にオーストラリアが10進法通貨へ移行した直後、新しい紙幣の精巧な偽札が出回ります。

そこで「コピーしにくい紙幣をつくる」という研究が始まりました。

研究の過程で、滑らかな透明素材と特殊な光学技術を組み合わせるアイデアが発展し、紙ではなくポリマーを使う紙幣へつながります。

1988年、オーストラリア建国200周年記念の10ドルポリマー紙幣が発行されました。

さらに1992年から1996年にかけて全額面が順次ポリマー化され、オーストラリアは全紙幣をポリマーへ移行した世界初の国となりました。

この技術はその後、ほかの多くの国や地域にも広がっています。

5. HPVワクチンにつながった技術

医療分野でも、世界的に重要な研究がオーストラリアから生まれています。

その代表が、子宮頸がんなどの原因となるヒトパピローマウイルス、HPVに対するワクチン技術です。

現在広く知られているガーダシル(Gardasil)の基礎につながった研究が、ブリスベンのクイーンズランド大学(University of Queensland)で行われました。

イアン・フレーザーとジャン・ジョウ

研究の中心となったのが、イアン・フレーザー(Ian Frazer)と中国出身の研究者ジャン・ジョウ(Jian Zhou)です。

2人は1991年、HPVの外殻に似た構造をつくる技術を開発しました。

これが、感染を起こさずに免疫反応を引き出すワクチン開発の重要な基盤になります。

大学での研究成果は特許化され、その後製薬会社による臨床開発などを経てワクチンとして実用化されました。

2006年に最初のHPVワクチン接種が始まってから20年。

クイーンズランド大学によると、2026年8月までにガーダシルは世界で6億回分以上が接種されています。

研究室で生まれたアイデアが、世界規模のがん予防へつながった例です。

6. PERC型太陽電池

屋根や大規模太陽光発電所に並ぶ太陽光パネル。

その発電効率を大きく向上させた技術のひとつも、オーストラリアで生まれました。

PERCと呼ばれる太陽電池です。

正式には「パッシベーテッド・エミッター・アンド・リア・セル」と呼ばれる構造で、太陽電池内部で失われるエネルギーを減らし、より効率よく電気を取り出すことができます。

マーティン・グリーンとニューサウスウェールズ大学

開発を率いたのは、シドニーのニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales/UNSW)のマーティン・グリーン(Martin Green)教授です。

グリーンは1983年にPERCの考え方をまとめ、その後研究チームが改良を進めました。

1988年には高効率のPERC太陽電池を製作。

長年にわたる効率向上を経て、2010年代に大量生産が拡大し、2018年には世界の太陽電池製造で主流の技術になりました。

現在はさらに新しい構造の太陽電池への移行も進んでいますが、世界に設置された膨大な数の太陽光パネルには、PERC技術が使われています。

オーストラリアは日差しの強い国というだけでなく、太陽光発電技術そのものの発展にも大きく貢献してきた国なのです。

7. 原子吸光分析法

一般旅行者にはあまりなじみのない名前ですが、科学や産業の世界では非常に重要なオーストラリア発の技術があります。

原子吸光分析法です。

鉱石、食品、水、血液、土壌などに、特定の元素がどれくらい含まれているかを測定するための分析方法です。

開発した中心人物は、CSIROの科学者アラン・ウォルシュ(Alan Walsh)でした。

「測るものが逆では?」から始まった発見

1952年、メルボルンで研究していたウォルシュは、それまで一般的だった「原子が出す光を測る」方法ではなく、原子が吸収する光を測ればよいのではないかと考えました。

そこから装置の開発を進め、1954年には実際に動作する分析装置を公開。

1955年には研究論文が発表されました。

原子吸光分析法は、少量しか含まれていない元素でも精度よく測定できることから、鉱業、農業、医学、環境調査、食品分析などへ急速に広がっていきました。

鉱業国オーストラリアの発展にも非常に相性のよい技術だったと言えます。



8. スプレー・オン・スキン

西オーストラリア州で生まれた有名な医療技術が、一般に「スプレー・オン・スキン」と呼ばれる治療技術です。

患者自身の皮膚から採取した細胞を利用し、培養・処理した細胞を損傷した皮膚へ広く届けることで、重度のやけどなどの治療を助けます。

この技術は後にリセル(ReCell)として実用化されました。

フィオナ・ウッドとマリー・ストーナー

開発したのは、パースを拠点に活動する形成外科医フィオナ・ウッド(Fiona Wood)と科学者マリー・ストーナー(Marie Stoner)です。

2人は1990年代から皮膚細胞を使った治療法の改良を続けました。

従来の方法では皮膚細胞を培養するのに長い時間が必要でしたが、より短期間で患者へ使えるようにすることを目指して研究が進められました。

2002年のバリ島爆弾事件では、多数の重度熱傷患者がパースへ搬送され、ウッドが率いる医療チームが治療にあたったことで、この技術も広く知られるようになりました。

現在ではオーストラリアだけでなく、海外でも使用されています。

9. グレースケール超音波診断技術

妊娠中の胎児を見る検査をはじめ、現在の医療で当たり前のように使われている超音波診断。

超音波そのものをオーストラリアが発見したわけでも、最初の医療応用がオーストラリアだったわけでもありません。

しかし、現在の超音波画像へつながるグレースケール表示技術の発展には、シドニーの研究チームが大きく貢献しました。

シドニーで進化した医療用超音波

中心となったのはジョージ・コソフ(George Kossoff)をはじめとする超音波研究チームです。

1960年代、シドニーの国立音響研究所などで医療用超音波装置の研究が進められました。

当時の超音波画像は、境界を白黒で表示するだけの単純なものが中心でした。

研究チームは、反射して戻ってくる超音波の強さの違いを灰色の濃淡として表示する方法を開発。

1969年には、組織の違いをより細かく見分けられるグレースケール画像技術へ発展しました。

これによって胎児、脳、乳房など、身体の内部構造をより詳しく観察できるようになります。

1970年代にはオーストラリア製の超音波診断装置オクトソン(Octoson)も開発され、海外へ輸出されました。

10. 実用的な機械式冷凍技術

最後は、時代を19世紀まで戻します。

現在では冷蔵庫も冷凍庫もあって当たり前ですが、人工的に大量の氷をつくり、食品を長期間冷やすことができるようになったのは比較的新しい歴史です。

オーストラリアで機械式冷凍技術の実用化に大きく貢献したのが、ジェームズ・ハリソン(James Harrison)でした。

新聞人でもあったジェームズ・ハリソン

ハリソンはスコットランド生まれで、オーストラリアへ移住し、ビクトリア州のジーロング(Geelong)で活動しました。

本業のひとつは新聞人で、ジーロング・アドバタイザーの創刊にも関わった人物です。

同時に冷凍技術の研究を進め、1850年代にエーテルを使った蒸気圧縮式の冷凍装置を開発しました。

1854年にはビクトリアで特許を取得し、ジーロングで人工的な氷の商業生産を開始します。

ハリソン以前にも世界では人工冷却の研究や装置が存在していたため、「冷蔵庫を発明した人」と一言で説明するのは正確ではありません。

しかし、蒸気圧縮式冷凍を実用的な産業技術へ発展させた先駆者のひとりだったことは間違いありません。

その後、機械式冷凍は食肉、乳製品、ビール、食品輸送などの産業を大きく変えていきます。

農畜産物を遠い海外市場へ輸出するオーストラリアにとって、冷凍技術は特に重要な技術でした。

なぜオーストラリアから発明が生まれた?

こうして並べてみると、発明の分野に一定の傾向が見えてきます。

航空、通信、鉱業、農業、医療、エネルギーなど、広大で人口の少ないオーストラリアが実際に抱えていた問題を解決するための技術が多いのです。

遠距離通信をどうするか。

広大な国で安全に航空機を飛ばすにはどうするか。

鉱物を正確に分析するにはどうするか。

強い日射をエネルギーとして使えないか。

遠隔地でも高度な医療を提供するにはどうするか。

必要に迫られて研究した結果、それが世界でも役立つ技術になった例が少なくありません。

CSIROという巨大な研究機関

オーストラリアの科学技術を語るときに欠かせないのがCSIROです。

国の研究機関として、農業、鉱業、通信、宇宙、環境、医療、食品など非常に幅広い研究を行っています。

今回紹介した中でも、Wi-Fiの基礎技術、ポリマー紙幣、原子吸光分析法などにCSIROが関係しています。

研究成果の中には、一般にはCSIROの名前を意識しないまま世界中で使われているものもあります。

2026年には組織の前身設立から100年を迎え、オーストラリア科学史における役割が改めて紹介されています。

大学から世界へ広がった技術も多い

政府研究機関だけではありません。

多チャンネル型人工内耳はメルボルン大学、HPVワクチンにつながる技術はクイーンズランド大学、PERC太陽電池はニューサウスウェールズ大学から生まれました。

特徴的なのは、大学で研究が終わらず、企業や政府と協力して実用化されたことです。

人工内耳からはコクレアという世界的な医療機器企業が成長しました。

大学の研究成果を企業へ移し、世界中へ普及させる仕組みが重要だったことがわかります。

日本人の生活にもオーストラリア発の技術

この記事で紹介した発明は、オーストラリア国内だけで使われているものではありません。

日本で暮らしていても、Wi-Fiはほぼ毎日使います。

日本を発着する旅客機にも飛行記録装置があります。

人工内耳、HPVワクチン、超音波診断、原子吸光分析なども日本の医療や研究で利用されています。

太陽光パネルにも、オーストラリアで発展した技術が入り込んできました。

つまり私たちは、オーストラリアに旅行したことがなくても、すでにオーストラリアで生まれたアイデアの恩恵を受けながら生活しているのです。

旅行中に「オーストラリアの科学」を感じられる場所

観光旅行でも、オーストラリアの科学技術に触れられる場所があります。

場所 関連する分野
パワーハウス・ミュージアム/シドニー 科学、工業、医療技術、デザイン
サイエンスワークス/メルボルン 科学、技術、宇宙、産業
オーストラリア国立博物館/キャンベラ オーストラリアの発明・技術史
オーストラリア準備銀行博物館/シドニー 紙幣とポリマー紙幣の歴史
ジーロング ジェームズ・ハリソンと冷凍技術の歴史

歴史、動物、大自然だけでなく、「オーストラリアがどんな技術を世界へ送り出してきたのか」という視点で博物館を見るのも面白いでしょう。

身近な技術から見るもうひとつのオーストラリア

オーストラリアは、日本の約20倍もの国土を持ちながら人口は約2,800万人という国です。

都市間の距離が長く、乾燥した土地が多く、鉱山や牧場は遠隔地にあります。

こうした環境は生活するうえでは大きな課題ですが、その課題が新しい技術を生むきっかけにもなりました。

Wi-Fiにつながるスマートフォン。

航空機のブラックボックス。

人工内耳。

水に強いポリマー紙幣。

HPVワクチン。

高効率太陽電池。

元素を測定する分析技術。

やけど治療。

超音波画像。

そして、食品を遠くまで運べるようにした冷凍技術。

分野はまったく違いますが、共通しているのは「現実にある問題を技術で解決しようとしたこと」です。

オーストラリア旅行では、どうしてもビーチ、カンガルー、ウルル、グレート・バリア・リーフといった自然や観光地へ目が向きます。

しかし少し視点を変えると、この国は意外なほど科学と発明の歴史を持っています。

ホテルでWi-Fiへ接続したときや、オーストラリアの透明な窓が入った紙幣を手にしたとき、「これもオーストラリアの技術なんだ」と思い出してみると、旅の見え方が少し変わるかもしれません。

よくある質問

Wi-Fiは本当にオーストラリアの発明ですか?

Wi-Fiや無線通信のすべてをオーストラリアが発明したわけではありません。CSIROの研究チームが1990年代に開発・特許化した高速無線LAN技術が、現在のWi-Fiを支える重要な技術になりました。そのため「Wi-Fiの基礎となった重要技術がオーストラリアで発明された」とするのがより正確です。

ブラックボックスを発明したのは誰ですか?

オーストラリアの科学者デビッド・ウォーレンです。1950年代にメルボルンの航空研究所で、操縦室の音声と飛行データを記録する装置を考案し、試作機を開発しました。その後チームによって技術が改良されました。

ブラックボックスはなぜ黒くないのですか?

「ブラックボックス」は俗称です。現在の航空機用記録装置は事故現場で見つけやすくするため、一般に明るいオレンジ色など目立つ色に塗装されています。

オーストラリアの紙幣がプラスチックなのはなぜですか?

偽造防止と耐久性向上が大きな理由です。オーストラリア準備銀行とCSIROがポリマー紙幣技術を共同開発し、1988年に最初の記念ポリマー紙幣を発行。1992~1996年には全額面をポリマーへ移行しました。

人工内耳もオーストラリアで発明されたのですか?

人工内耳の研究そのものは世界各国で行われていました。その中で、グレアム・クラークとメルボルン大学の研究チームが実用的な多チャンネル型人工内耳を開発し、1978年に大きな成果を上げました。この技術が後のコクレア製品につながっています。

HPVワクチンはオーストラリアだけで開発されたのですか?

完成したワクチンが一つの研究室だけで作られたわけではありません。クイーンズランド大学のイアン・フレーザーとジャン・ジョウらが1991年に開発した技術が重要な基盤となり、その後企業による研究、臨床試験、製造技術の開発を経て実用化されました。

オーストラリアは太陽光発電技術でも有名ですか?

はい。ニューサウスウェールズ大学のマーティン・グリーン教授と研究チームは、PERC型太陽電池をはじめ、シリコン太陽電池の効率向上で世界的に重要な研究を行ってきました。PERCは2010年代後半に世界の太陽電池製造で主流となりました。

オーストラリア旅行中に発明や科学技術を見られる博物館はありますか?

シドニーのパワーハウス、メルボルンのサイエンスワークス、キャンベラのオーストラリア国立博物館などがあります。またシドニーのオーストラリア準備銀行博物館では、紙幣やポリマー紙幣の歴史について知ることができます。

今回紹介した中で現在もっとも身近な発明は何ですか?

利用頻度で考えればWi-Fiでしょう。CSIROが開発した高速無線LAN技術は現在150億台を超える機器に組み込まれているとされ、スマートフォン、パソコン、テレビ、ルーターなど日常生活の多くの機器に関係しています。



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