オーストラリアの「ステーション」とは?巨大牧場・牧畜生活を解説

オーストラリアのアウトバックを旅行していると、道路標識や地図で「○○ステーション(Station)」という名前をよく見かけます。
日本人の感覚では「ステーション=駅」と考えてしまいますが、ここでいうステーションは鉄道駅ではありません。
オーストラリアでいう「ステーション」とは、牛や羊を飼育する大規模な牧場のことです。
特に内陸部では、その規模が日本の「牧場」という言葉から想像するものとはまったく違います。
柵の向こうに牛が見えている――という程度ではありません。
敷地の端から端まで車で何時間もかかり、牧場内に未舗装道路、滑走路、井戸、貯水タンク、作業場、従業員住宅などが点在しているステーションもあります。
南オーストラリア州のアナ・クリーク・ステーション(Anna Creek Station)は、現在の運営会社が公表する面積だけでも1万5,746平方キロ。
ひとつの牧場が、日本の都道府県ひとつに近い規模です。


ステーションは、オーストラリアの牧畜産業を支える仕事場であると同時に、家族や従業員が暮らす生活の場でもあります。
その一方で、牧畜業の拡大は先住民の土地への植民地化とも深く結び付いており、アボリジナルのストックマンたちが長い間、北部オーストラリアの牧畜産業を支えてきた歴史もあります。
この記事では、ステーションとは何なのか、日本の牧場との違い、牛と羊のステーション、ジャッカルーやジラルー、家畜の集め方、水の確保、ロードトレイン、先住民と牧畜の歴史、そして旅行者が体験できるステーション滞在まで詳しく紹介します。
- オーストラリアの「ステーション」とは?
- ファーム・ランチ・ステーションの違い
- なぜステーションはこんなに巨大?
- アナ・クリーク・ステーションは1万5,746平方キロ
- 巨大牧場なのに働く人は意外に少ない
- キャトル・ステーションとは?
- シープ・ステーションとは?
- 土地を全部「所有」しているとは限らない
- ステーションの中心「ホームステッド」
- 牧場の中に道路・滑走路・井戸まである
- 水の確保が牧場経営を左右する
- マスタリング|広大な土地から家畜を集める
- 昔は馬に乗って牛を集めた
- 現在はヘリコプターやバイクも活躍
- 集めた牛はヤードへ
- ロードトレインと巨大牧場の関係
- ストックマンとは?
- ジャッカルーとジラルーとは?
- ステーションにはどんな仕事がある?
- ステーションの1日はどんな生活?
- 「ちょっと買い物」ができない生活
- 子供の学校はどうする?
- 病院から遠いステーション
- 先住民ストックマンが支えた牧畜産業
- ウェーブ・ヒル・ウォークオフ
- ステーションである前に「カントリー」だった土地
- 現代のステーションはかなりハイテク
- 旅行者もステーションに泊まれる?
- カーティン・スプリングス|ウルル近郊の現役牧場
- キングス・クリーク・ステーション|キングス・キャニオン近郊
- ステーション滞在で体験できること
- 観光牧場ではないステーションには勝手に入らない
- ステーションを知るとアウトバックが違って見える
- よくある質問
オーストラリアの「ステーション」とは?
オーストラリアで使われる「ステーション」は、牛や羊を放牧する大規模な牧畜施設を意味します。
牛を中心に飼育する場所はキャトル・ステーション(Cattle Station)、羊を中心とする場所はシープ・ステーション(Sheep Station)と呼ばれます。
都市に近い小規模な農場まで、すべてをステーションと呼ぶわけではありません。
特に「ステーション」という言葉には、広大な土地を使って家畜を放牧するオーストラリアの牧畜文化というイメージがあります。
クイーンズランド州、西オーストラリア州、南オーストラリア州、ノーザンテリトリーなど、人口密度の低い内陸地域に大規模なステーションが数多くあります。
ファーム・ランチ・ステーションの違い
英語圏でも地域によって呼び方が違います。
| 言葉 | オーストラリアでの一般的な使われ方 |
|---|---|
| Farm | 農作物や家畜を扱う農場全般。比較的小規模な農場にも使う |
| Station | 牛・羊などを広大な土地で放牧する大規模牧場 |
| Ranch | 主にアメリカで使われる表現。オーストラリアでは一般的ではない |
日本語ではどれも「牧場」と訳されることがあります。
しかしアウトバックで「ステーション」と聞いた場合は、非常に広い放牧地を持つ牧畜事業所をイメージするとわかりやすいでしょう。
なぜステーションはこんなに巨大?
最大の理由は、土地1平方キロあたりで育てられる家畜の数が少ないからです。
雨の多い地域なら、狭い土地でも豊富な牧草を育てることができます。
ところがオーストラリア内陸部では、年間降水量が非常に少ない地域があります。
一面に緑の牧草が広がっているわけではありません。
家畜は広範囲を移動しながら、自然に生える草や低木を食べ、水場を利用します。
そのため1頭の牛を養うために必要な土地が非常に広くなり、結果として牧場全体も巨大になるのです。
雨が多い年と干ばつの年でも、土地が養える家畜の数は大きく変わります。
アナ・クリーク・ステーションは1万5,746平方キロ
その規模を実感できる代表例が、南オーストラリア州のアナ・クリーク・ステーションです。
クーバー・ペディ(Coober Pedy)の東約160キロに位置し、現在はウィリアムズ・キャトル・カンパニー(Williams Cattle Company)が運営しています。
2026年現在、同社が公表している面積は1万5,746平方キロ。
牛の頭数は約1万7,000頭です。
地図上で見ると、もはや「牧場」というよりひとつの地域に見える大きさです。
もともとは羊を飼育していましたが、ディンゴによる被害などから、後に牛が中心になりました。
巨大牧場なのに働く人は意外に少ない
1万5,000平方キロを超える牧場なら、数百人が働いているように思えます。
ところがアナ・クリーク・ステーションが公表している人員は、マネージャーに加え、最大8人程度のステーション・ハンド、機械担当者、料理人などです。
もちろん繁忙期や請負作業などによって人数は変わりますが、土地の広さと比べると驚くほど少人数です。
これが可能なのは、家畜を牛舎の中で常時管理する集約型畜産ではなく、広大な土地へ放牧する方式だからです。
その代わり、一度牛を集める「マスタリング」の時期になると大規模な作業になります。
キャトル・ステーションとは?
アウトバックで特に存在感が大きいのがキャトル・ステーションです。
広い牧草地へ肉牛を放し、繁殖させ、一定の時期に集めて出荷します。
北部オーストラリアでは暑さや乾燥に強い牛の品種や交雑種が使われることも多く、地域の気候に合わせた飼育が行われています。
南オーストラリア州のアナ・クリークでは、ポール・ヘレフォード系の牛が中心です。
一方、中央オーストラリアのカーティン・スプリングス(Curtin Springs)では、マレー・グレーなど英国系の品種を使っています。
「オーストラリアの牧場は全部同じ牛」というわけではありません。
シープ・ステーションとは?
羊を中心とする大規模牧場がシープ・ステーションです。
オーストラリアは長い間、羊毛生産で世界的に知られてきました。
特にメリノ種の羊から取れる細い羊毛は、オーストラリアの代表的な農畜産物です。
シープ・ステーションでは羊を集めるマスタリングに加え、毛刈りが大きな仕事になります。
大量の羊を扱うステーションには、専用の毛刈り小屋が設けられています。
地域によっては、もともと羊を飼っていたステーションがディンゴの被害や経営条件の変化によって牛へ転換した例もあります。
土地を全部「所有」しているとは限らない
巨大ステーションについて「1万平方キロもの土地を個人が所有している」と説明されることがありますが、ここにも注意が必要です。
アウトバックの牧畜地には、国や州・準州に属する土地を長期的に借りて牧畜に利用するパストラル・リース(Pastoral Lease)が広く使われています。
オーストラリア政府の土地制度では、牧畜目的の永続型リースや期限付きリースが独立した区分になっています。
つまり経営者がステーションの事業や建物、家畜などを所有していても、土地そのものが一般的な住宅地と同じ「完全な私有地」であるとは限りません。
また先住民の権利や文化遺産、自然環境の保護など、土地利用にはさまざまな制度が重なります。
ステーションの中心「ホームステッド」
巨大なステーションの中心になるのがホームステッド(Homestead)です。
経営者やマネージャーの住居を中心に、事務所、従業員宿舎、厨房、倉庫、機械整備施設などが集まっています。
日本の牧場なら「事務所から牛舎まで歩いて行く」という感覚ですが、巨大ステーションではホームステッドから作業場所まで車で何十分、何時間ということがあります。
敷地の反対側まで日帰りできないほど広いステーションもあります。
牧場の中に道路・滑走路・井戸まである
大規模ステーションは、ひとつの小さな町のような機能を持っています。
| 設備 | 役割 |
|---|---|
| ホームステッド | 住宅、事務所、生活の中心 |
| ヤード | 牛や羊を集め、選別・管理する |
| 井戸・ボア | 地下水をくみ上げる |
| タンク・ダム | 家畜用の水を貯める |
| 未舗装道路 | 牧場内の移動 |
| 作業場 | 車両や農業機械の修理 |
| 滑走路 | 小型航空機による移動・緊急時など |
| 従業員住宅 | 遠隔地で働くスタッフの生活拠点 |
ノーザンテリトリー政府が管理する牧畜リースの地理データにも、道路、フェンス、井戸、タンク、ダム、ホームステッド、滑走路などがステーションの主要インフラとして記録されています。
水の確保が牧場経営を左右する
アウトバック牧畜で最も重要なもののひとつが水です。
土地がどれほど広くても、牛が水を飲めなければ放牧できません。
自然の川や水たまりだけでは、年間を通じて安定した水源にならない地域があります。
そこで地下水をくみ上げる井戸やボア、風車、ポンプ、貯水タンクなどが利用されてきました。
内陸部の一部では大鑽井盆地(Great Artesian Basin)の地下水も重要な役割を果たしています。
ステーションの地図を見ると、「どこに牛がいるか」だけでなく、「どこに水があるか」が家畜管理の大きな鍵であることがわかります。
マスタリング|広大な土地から家畜を集める
広い土地へ放牧している牛や羊を、一か所へ集める作業をマスタリング(Mustering)といいます。
家畜の数を確認したり、子牛を分けたり、健康状態を確認したり、出荷する牛を選んだりするために必要です。
数千平方キロの土地に散らばった牛を集めるのですから、簡単な仕事ではありません。
家畜の位置、水場、地形、天候を考えながら何日もかけて作業する場合があります。
昔は馬に乗って牛を集めた
伝統的なマスタリングの中心は馬でした。
ストックマンたちが何人も馬に乗り、犬も使いながら牛の群れを誘導します。
さらに昔は、集めた牛を鉄道駅、市場、食肉処理施設などまで何百キロも歩かせるドロービング(Droving)も行われました。
国立オーストラリア博物館の資料では、ドロービングのチームは牛を1日に約13キロ移動させながら、餌と水を確保して進んだと説明されています。
数百頭の牛とともに何週間もアウトバックを移動する生活です。
現在はヘリコプターやバイクも活躍
現在のステーションでも馬は使われますが、牧畜の方法は大きく変わりました。
四輪駆動車、バギー、オフロードバイクなどが利用され、巨大ステーションではヘリコプターによるマスタリングも行われます。
上空から牛の位置を確認し、地上スタッフと連携してヤードの方向へ誘導します。
馬だけでは何日もかかった範囲を効率的に確認できるため、広大な北部オーストラリアでは特に有効です。
つまり現在のストックマンに必要なのは、馬の技術だけではありません。
車両、無線、家畜管理、機械など、幅広い能力が求められます。
集めた牛はヤードへ
マスタリングした牛は、キャトル・ヤードと呼ばれる囲いへ集めます。
ここで牛をグループに分け、体重や状態を確認し、必要な処置や出荷準備を行います。
出荷する牛はロードトレインへ積み込まれます。
大規模ステーションではホームステッド近くにひとつだけヤードがあるのではなく、広大な敷地の複数地点にヤードを設けていることもあります。
ロードトレインと巨大牧場の関係
前の記事で紹介したロードトレインが発達した背景には、この巨大ステーションがあります。
かつては牛を歩かせて移動していました。
しかし牛を何百キロも歩かせれば時間がかかり、体重も落ちます。
そこで20世紀になると、大量の牛を一度に運べるロードトレインが重要になりました。
現在では複数の家畜輸送トレーラーを連結し、ステーションから市場、肥育場、食肉処理施設、港などへ牛を運びます。
巨大ステーションと巨大ロードトレインは、アウトバックの距離から生まれた組み合わせなのです。
ストックマンとは?
ステーションで牛や羊を扱う人を一般にストックマン(Stockman)と呼びます。
アメリカの「カウボーイ」に近い仕事ですが、オーストラリアではストックマンという言葉が伝統的に使われてきました。
家畜を集め、移動させ、ヤードで作業し、フェンスや水場を確認します。
歴史的には馬に乗る技術が非常に重要でした。
現在は男女ともこの仕事に就いており、「ストックパーソン」などの表現を使う場合もあります。
ジャッカルーとジラルーとは?
オーストラリアらしい言葉として有名なのがジャッカルー(Jackaroo)とジラルー(Jillaroo)です。
伝統的には、ステーションで牧畜の仕事を学ぶ若い研修者・見習いを指します。
ジャッカルーが男性、ジラルーが女性に使われてきました。
国立オーストラリア博物館の資料でも、ドロービング・チームの熟練したストックマンとともに働く見習いをジャッカルー、ジラルーと説明しています。
現在は「ステーション・ハンド」など、性別を問わない職種名も広く使われています。
オーストラリアでワーキングホリデーをする日本人が、ステーションの求人でこうした言葉を目にすることもあります。
ステーションにはどんな仕事がある?
巨大牧場を運営するためには、家畜を扱う仕事以外にもさまざまな役割があります。
| 仕事 | 主な内容 |
|---|---|
| マネージャー | ステーション全体の経営・運営 |
| ステーション・ハンド | 家畜、フェンス、水場、車両など幅広い作業 |
| ストックマン | 主に牛・羊の管理やマスタリング |
| 機械担当 | 車両、ポンプ、農業機械などの整備 |
| ボア・ランナー | 井戸やポンプ、水場を巡回 |
| 料理人 | 遠隔地で働くスタッフの食事を担当 |
| ガヴァネス | ステーションに暮らす子供の学習を支援 |
実際にウィリアムズ・キャトル・カンパニーの現在の採用職種にも、ステーション・ハンド、料理人、ガヴァネスなどがあります。
ステーションの1日はどんな生活?
仕事内容は季節によって大きく変わります。
マスタリングの時期なら早朝から作業が始まり、一日中家畜を扱うことがあります。
別の日には数十キロ離れた水場へ車で向かい、ポンプやタンクを点検します。
壊れたフェンスを直すこともあれば、車両の整備、家畜の積み込み、道路の確認などを行うこともあります。
アウトバックでは専門業者をすぐ呼べるとは限りません。
そのため「壊れたら自分たちで何とかする」能力が重要です。
「ちょっと買い物」ができない生活
大都市に暮らしていると、スーパーまで車で10分でも遠く感じることがあります。
アウトバックのステーションでは、その感覚がまったく違います。
最寄りの町まで100キロ以上ということも珍しくありません。
食料、燃料、部品などを計画的に購入しなければなりません。
物流を支える大型トラックが来られなくなれば、生活にも直接影響します。
雨による道路閉鎖が数日続くだけでも、遠隔地では大きな問題になります。
子供の学校はどうする?
巨大ステーションで暮らす家族の子供は、毎朝スクールバスで町の学校へ通えるとは限りません。
そこで発達したのが、以前の記事で紹介したスクール・オブ・ジ・エアなどの遠隔教育です。
かつては無線を使って授業を受け、現在はインターネットや映像通信を利用します。
家庭やステーションには、子供の学習を支援するガヴァネスが雇われることもあります。
巨大牧場の生活とオーストラリア独自の遠隔教育は、深くつながっています。
病院から遠いステーション
学校と同じ問題は医療にもあります。
近くに大きな病院がない地域で事故や急病が起きた場合、陸路だけでは間に合わないことがあります。
そこで重要なのが、以前紹介したロイヤル・フライング・ドクター・サービス(Royal Flying Doctor Service/RFDS)です。
遠隔地へ航空機で医療スタッフを送り、必要に応じて患者を大きな病院へ搬送します。
ステーションに滑走路が設けられている理由のひとつにも、こうした遠隔地特有の事情があります。
先住民ストックマンが支えた牧畜産業
オーストラリアのステーション文化を語るとき、先住民の人々の存在を外すことはできません。
特に北部・中央オーストラリアでは、何世代にもわたりアボリジナルの男性と女性がストックマンや家事労働者としてステーションで働きました。
国立オーストラリア博物館は、北部・中央部の牧畜地域で先住民が優れた騎手・ストックワーカーとなり、多くのステーションがその労働力に依存していたと説明しています。
土地や水場を深く知っていることも、広大な土地で家畜を扱ううえで重要でした。
しかし、その働きに対して公正な賃金が支払われなかった時代が長く続きました。
現金ではなく食料や衣服などの配給だけで働かされた例もあります。
ウェーブ・ヒル・ウォークオフ
この歴史を象徴する出来事が、1966年のウェーブ・ヒル・ウォークオフ(Wave Hill Walk-Off)です。
ノーザンテリトリーのウェーブ・ヒル・ステーションで働いていたグリンジ(Gurindji)のストックマン、家事労働者とその家族、約200人が仕事場を離れました。
リーダーとなったのがビンセント・リンギアリ(Vincent Lingiari)です。
当初は低賃金や劣悪な労働条件への抗議でしたが、運動は彼らの土地を取り戻す要求へ発展しました。
ストライキは9年間に及び、その後の先住民土地権運動に大きな影響を与えます。
ステーションの歴史は「開拓者が広い土地で牛を育てた」という牧歌的な物語だけでは語れません。
ステーションである前に「カントリー」だった土地
ヨーロッパ人が牧畜用のステーションをつくる以前から、その土地には先住民が暮らしていました。
彼らにとって土地は単なる牧草地でも不動産でもありません。
水場、山、川、動植物、祖先の物語、文化、法律などが結び付いた「カントリー(Country)」です。
19世紀から20世紀に牧畜フロンティアが拡大する中で、先住民が土地から追われたり、ステーションの労働者となったりした歴史があります。
現在では先住民組織が所有・運営する牧畜事業もあり、ネイティブ・タイトルなど土地の権利が牧畜リースと重なって存在する地域もあります。
アウトバックの景色を見ると「誰もいなかった広い土地」に見えることがありますが、実際には非常に長い人間の歴史を持つ土地です。
現代のステーションはかなりハイテク
「ステーション」という言葉から、馬に乗ったストックマンと風車だけを想像すると、現在の牧畜業とは少し違います。
今では衛星通信、GPS、無線通信、監視カメラ、自動給水設備などが利用されています。
家畜に電子識別タグを付けて個体を管理することもあります。
ヘリコプターや小型航空機を利用するステーションもあります。
水場を遠隔監視できれば、「タンクに水があるか確認するためだけに往復100キロ走る」といった作業を減らすことができます。
ドローンなど新しい技術の利用も進んでいます。
広大だからこそ、オーストラリアの牧畜では遠隔管理技術の価値が非常に大きいのです。
旅行者もステーションに泊まれる?
はい。すべてではありませんが、宿泊施設やキャンプ場を設け、旅行者を受け入れているステーションがあります。
こうした滞在は一般にステーション・ステイなどと呼ばれます。
高級ホテルのような施設もあれば、簡素なキャビン、テント、キャンプ場などさまざまです。
星空、焚き火、家畜、赤土の風景など、大都市とはまったく違うアウトバックの日常を体験できるのが魅力です。
ただし、現役の牧場では観光が本業とは限りません。
家畜の作業、道路状況、天候などによって体験内容が変わることがあります。
カーティン・スプリングス|ウルル近郊の現役牧場
日本からの旅行者にも利用しやすい例が、ノーザンテリトリーのカーティン・スプリングスです。
ウルルやキングス・キャニオン方面を結ぶ道路沿いにあり、宿泊施設、キャンプ場、食事、燃料などを提供しています。
同時に、現在も牛を飼育する私有のキャトル・ステーションです。
2026年現在、カーティン・スプリングスは100万エーカーを超える土地で約4,000頭の牛を飼育していると公式サイトで紹介しています。
巨大な牧畜地を維持しながら、旅行者の拠点としても機能している例です。
観光施設としてつくられた「牧場テーマパーク」ではなく、アウトバックで実際に生活・仕事が続いている場所に滞在できるのが特徴です。
キングス・クリーク・ステーション|キングス・キャニオン近郊
もうひとつ中央オーストラリアで知られているのがキングス・クリーク・ステーション(Kings Creek Station)です。
ワタルカ国立公園(Watarrka National Park)のキングス・キャニオンから約36キロ。
キャンプ場から快適なテントタイプの宿泊施設まで、幅広い滞在方法が用意されています。
ステーション内を走るバギー・ツアーでは、アウトバックでの生活や牧場の仕事について知ることができます。
ヘリコプター遊覧も行われており、地上から見ているだけでは分かりにくい中央オーストラリアの広さを実感できます。
ステーション滞在で体験できること
場所によって内容は異なりますが、ステーション滞在では次のような体験があります。
| 体験 | 内容 |
|---|---|
| ステーション・ツアー | 牧場設備、土地、家畜管理について案内 |
| 四輪駆動・バギー | 広大な敷地を車で巡る |
| キャンプ | アウトバックの自然の中で宿泊 |
| 星空観察 | 人工照明の少ない環境で南半球の星空を見る |
| ヘリコプター遊覧 | 牧場や周辺の大自然を上空から見る |
| 牧畜文化 | ストックマンやステーション生活について学ぶ |
「牛を追いかける体験」が必ずできるわけではありません。
家畜を扱う作業は季節や牧場運営に左右されるため、観光客向けの内容は施設ごとに確認しましょう。
観光牧場ではないステーションには勝手に入らない
アウトバックをドライブしていると、道路からステーションの入口を見かけることがあります。
しかし「オーストラリアらしいから少し見学してみよう」と勝手に入るのは避けてください。
多くは実際の仕事場であり、私有地や牧畜リースです。
牧場内の道路には家畜、大型車両、作業機械などもあります。
ゲートを開けたままにすると、家畜が別の区画へ移動してしまう場合もあります。
観光客を受け入れているステーション以外は、一般の農場や工場と同じように、許可なく立ち入らないのが基本です。
ステーションを知るとアウトバックが違って見える
オーストラリアのステーションは、日本語で一言「牧場」と訳してしまうと、その大きさや生活の特殊さがなかなか伝わりません。
数千、時には1万平方キロを超える土地。
そこに散らばる何千頭もの牛。
何十キロも離れた水場。
ホームステッド、井戸、未舗装道路、作業場、滑走路。
そして、それを比較的少人数で管理する人々。
現在は四輪駆動車、バイク、ヘリコプター、GPS、衛星通信などが利用されていますが、基本的な課題は昔と変わりません。
広大な土地で、どう家畜に水と餌を確保し、どう集め、どう遠くの市場まで運ぶか。
その答えとして、ストックマン、スクール・オブ・ジ・エア、フライング・ドクター、ロードトレインなど、オーストラリア独特の仕組みが発達しました。
一方、ステーションの歴史はヨーロッパ人による牧畜産業だけの歴史ではありません。
そこは植民地化以前から先住民が暮らしてきたカントリーであり、多くの先住民ストックマンや女性労働者が牧畜産業を支えました。
ウェーブ・ヒルのように、労働条件と土地の権利をめぐる重要な出来事の舞台になったステーションもあります。
オーストラリアをドライブして「○○ Station」という標識を見かけたら、その先には単なる牛のいる牧場ではなく、ひとつの生活圏ともいえる広大な世界があると考えてみてください。
そして実際にステーションへ滞在すると、都市観光ではなかなか見えてこない「オーストラリアの距離」が実感できるはずです。
よくある質問
主に牛や羊を広大な土地で放牧する大規模な牧場です。牛中心ならキャトル・ステーション、羊中心ならシープ・ステーションと呼ばれます。特にアウトバックでは非常に広い土地を持つステーションがあります。
オーストラリアでは、広大な土地で牛や羊を放牧する牧畜施設に「ステーション」という言葉が伝統的に使われています。農作物を育てる農場や比較的小規模な農場には「ファーム」が一般的です。
代表例のアナ・クリーク・ステーションは、現在の運営会社の公表値で1万5,746平方キロです。南オーストラリア州内陸部にあり、約1万7,000頭の牛を飼育しています。
必ずしもそうではありません。アウトバックでは、国や州・準州側の土地を牧畜目的で長期的に利用するパストラル・リースが広く使われています。土地制度は州・準州によって異なり、先住民の権利などが重なる場合もあります。
伝統的にはステーションで牧畜の仕事を学ぶ若い見習いを指す言葉です。ジャッカルーは男性、ジラルーは女性に使われてきました。現在はステーション・ハンドなど性別を問わない職種名も一般的です。
家畜を集める作業をマスタリングと呼びます。伝統的には馬と犬を使いました。現在は馬に加えて四輪駆動車、バイク、バギー、ヘリコプターなども利用されています。
遠隔地では毎日学校へ通えないため、スクール・オブ・ジ・エアなどの遠隔教育を利用する家庭があります。現在はインターネットによる授業が中心で、家庭で学習を手伝うガヴァネスを雇う場合もあります。
宿泊客を受け入れているステーションなら可能です。中央オーストラリアではカーティン・スプリングスやキングス・クリーク・ステーションなどに宿泊施設があります。キャンプ場、テント型宿泊施設、ステーションツアーなど内容は施設によって異なります。
はい。特に北部・中央オーストラリアでは、何世代にもわたりアボリジナルの人々がストックマンや家事労働者として牧畜産業を支えました。一方で賃金や労働条件、土地の権利をめぐる深刻な問題もあり、1966年のウェーブ・ヒル・ウォークオフはその歴史を象徴する出来事です。
オーストラリアの旅行手配
トラベルドンキーでは、オーストラリア各都市のオプショナルツアー(現地発着ツアー)、アクティビティ等をご紹介、ご予約を承っています。
オーストラリアを知り尽くしたオーストラリア在住のスタッフが対応しておりますので、正確な情報の提供、的確なアドバイス、到着フライトの遅延・欠航など、緊急時の迅速な対応も可能となっています。
オーストラリア旅行をご計画中の方は、是非トラベルドンキーのご利用をご検討ください。きっと素敵な思い出深いオーストラリア旅行になりますよ。
オーストラリアのオプショナルツアー、アクティビティ、宿泊パッケージ


