オーストラリアの国勢調査(Census)とは?短期旅行者も回答義務あり・提出方法を解説

オーストラリアでは、5年に一度、国勢調査にあたるセンサス(Census of Population and Housing)が行われます。人口だけを数える調査ではなく、年齢、家族構成、住宅、教育、仕事、所得、言語、祖先、宗教、健康状態など、社会の姿を細かく記録する大規模な統計調査です。

最新の国勢調査は2026年8月11日(火)に実施されました。重要なのは、対象がオーストラリア国民や永住者だけではないことです。調査日の夜にオーストラリア国内にいた人は、原則として国勢調査票に含める必要があります。

そのため、日本から数日間だけ観光に来ていた旅行者、ワーキングホリデー、留学生、短期出張者なども対象です。ホテル、モーテル、ホステルなどに泊まっていた外国人旅行者も除外されません。外国外交官とその家族など、ごく限られた例外だけが対象外です。

短期旅行者にとっては「自分はオーストラリア居住者ではないのに、なぜ国勢調査へ回答するのか」と戸惑いやすい制度ですが、センサスは「普段どこに住んでいるか」だけでなく、「調査日の夜に誰がオーストラリアにいたか」を把握する調査でもあります。

この記事では、オーストラリアの国勢調査の目的、歴史、2026年調査の内容、回答義務、短期旅行者が対象になる理由、ホテル・民泊・友人宅に滞在している場合の回答方法、オンライン回答の手順、プライバシー、未回答の場合の扱いまで、旅行案内ではなく制度そのものを解説するレポートとしてまとめます。




オーストラリアの国勢調査とは?

オーストラリアのCensusは、日本の国勢調査と同じようなものですか?
基本的な目的は似ています。ただし豪州では、調査日の夜に国内にいる海外旅行者や短期滞在者まで対象に含める点が、日本人旅行者には特に重要です。

オーストラリアの国勢調査の正式名称は「Census of Population and Housing」です。オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics/ABS)が実施します。

通常の社会調査が一部の人を抽出して行うサンプル調査であるのに対し、Censusは原則として国内にいる全員を対象とします。そのため、人口の少ない地域や小規模なコミュニティについても、全国で同じ基準の統計を作れることが大きな特徴です。

調査結果からは、人口、世帯、住宅だけでなく、教育、仕事、所得、文化的背景、言語、家族構成、健康などを地域別に把握できます。

項目 オーストラリアのCensus 特徴
実施機関 Australian Bureau of Statistics 連邦政府の統計機関。
頻度 5年ごと 1966年以降5年ごとに実施。
対象 調査日の夜に国内にいる人 海外旅行者・ビザ保有者も含む。
回答方法 オンライン、紙、支援付き回答 2026年はオンライン回答が中心。
法的根拠 Census and Statistics Act 1905 回答は原則義務。



国勢調査の歴史

オーストラリアでは、ヨーロッパ系入植者の人口を数える試みが1788年までさかのぼります。1795~1825年には「Muster」と呼ばれる人口確認が定期的に行われました。

植民地単位では、ニューサウスウェールズ州(New South Wales)で1828年に最初の植民地Censusが実施されています。1881年には豪州の各植民地が初めて同時にCensusを行いました。

連邦国家オーストラリアとして初めての全国Censusは1911年です。当時は約7,300人の調査員が配置され、馬、馬車、自転車などで各地を回って調査票を回収しました。

その後1921年、1933年、1947年、1954年、1961年、1966年に実施され、1966年以降は5年ごとに行われています。2006年にはオンライン回答が初めて導入されました。

出来事 意味
1828年 ニューサウスウェールズ州で植民地Census 初期の本格的人口調査。
1881年 全植民地で同時実施 全国的調査への前段階。
1911年 最初の全国Census 連邦国家として初の国勢調査。
1966年以降 5年ごとに実施 現在のサイクルが定着。
2006年 オンライン回答導入 紙中心からデジタル化へ。
2026年 最新Census 8月11日実施。




2026年国勢調査

最新のCensus nightは2026年8月11日(火)でした。Censusは「その日の夜にどこにいたか」を基準に集計するため、普段住んでいる住所と調査日の宿泊場所が違っていても問題ありません。

2026年調査では、16歳以上を対象にジェンダーと性的指向に関する質問が新たに追加されました。どちらにも「Prefer not to answer」の選択肢が設けられています。

また、祖先(Ancestry)は最大4つまで回答できるようになり、長期健康状態の選択肢には肝疾患が追加されました。一方、宗教については従来と同じく回答自体が任意です。

ABSによると、2026年は約85%の回答がオンラインになると見込まれており、紙の調査票も希望者に提供されます。

2026年のCensus nightはすでに終了

この記事執筆時点では2026年8月11日の調査日は終了しています。ただし、調査日にオーストラリア国内にいてまだ回答していない世帯・対象者は、ABSから回答を求められる場合があります。8月24日時点でもABSは未回答世帯へのフォローアップを続けています。



誰が対象になる?

2026年Censusでは、8月11日の夜にオーストラリア国内にいた人は原則として全員が対象です。オーストラリア国籍を持っているか、永住権があるか、どのビザで滞在しているかは基本的に関係ありません。

対象 考え方
オーストラリア国民 対象 国内にいた場合。
永住者 対象 国内にいた場合。
留学生 対象 Student visaでも対象。
ワーキングホリデー 対象 Temporary visaでも対象。
短期出張者 対象 滞在期間の長短を問わない。
海外旅行者 対象 数日の観光でも対象。
外国外交官と一定の家族 原則対象外 法律上の限定的な例外。
調査日の夜に海外にいた豪州居住者 原則対象外 国内Censusの対象範囲外。

ノーフォーク島(Norfolk Island)、クリスマス島(Christmas Island)、ココス(キーリング)諸島(Cocos (Keeling) Islands)にいた人もCensusの対象に含まれます。




短期旅行者も回答が必要

日本から5日間だけ旅行していて、8月11日にシドニーのホテルに泊まっていました。それでもCensusに答えるのですか?
はい。調査日の夜にオーストラリアにいた海外旅行者は、滞在期間が短くても対象です。

ABSは、海外からの訪問者について「どのくらい豪州に滞在しているか、今後どのくらい滞在する予定かに関係なくCensusの対象」としています。

そのため、「観光ビザだから不要」「ホテルに泊まっているから不要」「1週間しかいないから不要」という扱いにはなりません。

この仕組みは、調査日に実際に国内に存在していた人口を把握する「Place of enumeration」の考え方に基づいています。同時に質問票では通常居住地も聞かれるため、短期旅行者はオーストラリアの通常居住者とは区別して統計処理できます。

短期旅行者は、通常居住地の質問で「Other country」を選ぶことで、豪州居住者ではなく海外からの訪問者として扱われます。



滞在場所別の回答方法

旅行者の回答方法は、8月11日の夜にどこへ泊まっていたかで変わります。

ホテル・モーテル・ホステル

ホテル、モーテル、ホステル、学生寮、病院などはCensus上「Non-private dwelling」として扱われます。こうした場所に滞在した人は、原則として1人分のPersonal Formを使います。

フォームでは滞在施設について「private homeではない」とし、Residential statusには旅行者なら「Guest」を選びます。

友人・親戚の家

友人や親戚の自宅へ泊まっていた場合、その家のHousehold Formに「Visitor」として含めてもらうのが基本です。

通常、その世帯の1人が、Census nightにその住所に泊まった全員について回答します。乳児や宿泊中の来客も含まれます。

Airbnbなど一棟・一室を借りた場合

自己完結型の住宅として利用している短期賃貸では、Private dwellingとして扱われるケースがあります。Censusの案内がその住所に届いていれば、宿泊者がその住所について回答します。

自分だけ別フォームで答えたい場合

友人宅やシェアハウスで他人に自分の回答を見られたくない場合などは、ABSへ連絡して別のオンライン用Census numberや紙のPersonal Formを依頼できます。

8月11日の宿泊場所 主な回答方法 回答上のポイント
ホテル Personal Form Residential statusはGuest。
ホステル Personal Form 海外短期旅行者も対象。
友人宅 Household Formに含める Visitorとして回答。
親戚宅 Household Formに含める 関係性も回答。
短期賃貸住宅 住所に届いた案内に従う Private dwellingとなる場合。




オンラインでの回答方法

2026年Censusはオンライン回答が基本です。一般家庭には事前にCensusの案内書類が届き、そこにオンライン回答に必要な情報が記載されました。

オンライン回答の基本手順

  1. Census公式サイト「census.abs.gov.au」へアクセスする。
  2. 「Continue to Census form」を選ぶ。
  3. 案内に記載されたCensus numberを入力する。
  4. Temporary passwordを入力する。
  5. Census nightの8月11日にその住所へ泊まった人を入力する。
  6. 各人について質問へ回答する。
  7. 内容を確認して送信する。

2026年は、事前に登録した一部の利用者についてmyGovからCensusへアクセスする方法も提供されました。ただし、myGovがCensusの回答内容を取得するわけではなく、回答データはABSだけが扱います。

紙で答えることもできる

オンラインが使えない場合や希望する場合は、紙のフォームを利用できます。紙フォームは返信用封筒でABSへ返送します。

英語に不安がある場合

2026年Censusでは日本語を含む26言語の案内が用意され、Translating and Interpreting Service(TIS)も利用できます。TISは150を超える言語の通訳に対応します。



どんな質問に答える?

Censusでは氏名や年齢だけでなく、社会を詳しく分析するための幅広い項目が質問されます。

分野 主な内容
基本情報 氏名、年齢、性別、出生地など。
居住 通常居住地、住宅の種類、所有・賃貸など。
家族 世帯員との関係、婚姻状況など。
文化 祖先、家庭で使う言語、英語力、宗教。
教育 学校・教育機関への在籍、資格など。
仕事 就業状況、職業、勤務先業種、労働時間など。
所得 個人所得。
健康 長期的な健康状態、支援の必要性など。
2026年新設 16歳以上のジェンダー、性的指向。

宗教の質問は任意です。また、2026年に追加された16歳以上のジェンダー・性的指向の質問には「Prefer not to answer」が用意されています。

海外からの短期旅行者には、通常居住者とは異なる処理がされるため、すべての項目が長期居住者と同じ形で統計公表されるわけではありません。




短期旅行者の「通常居住地」の答え方

日本からの旅行者にとって、最も迷いやすい質問の一つが「Where does the person usually live?」です。

2026年フォームでは、「普段は別の国に住んでおり、オーストラリアへの訪問が1年未満の人」は「Other country」を選ぶよう明記されています。

日本から2週間旅行している場合

通常居住地はホテルの住所ではありません。「Other country」を選び、日本を通常居住国として回答します。ホテルは「Census nightにいた場所」、日本は「普段住んでいる場所」という区別です。

長期滞在者については、2026年中に合計6か月以上住んだ、または住む予定の住所が「通常居住地」の基準になります。

ケース 通常居住地の考え方
日本から1週間の旅行 Other country。
日本から3か月の滞在 原則Other country。
豪州に長期居住 豪州内で通常住む住所。
調査日だけ別都市へ旅行 その夜の宿泊地で回答し、通常住所は別に記入。



個人情報・プライバシーは大丈夫?

Censusでは氏名、住所、仕事、健康、家族関係など、非常に詳しい個人情報を扱います。そのため、ABSにはCensus and Statistics Act 1905などに基づく厳格な秘密保持義務があります。

ABSは、個人や世帯を特定できる形でCensus情報を公開しません。また、Census情報は移民法、税務、警察などのコンプライアンス・法執行目的には使用しないと明記しています。

オンラインCensusは暗号化されたシステムで処理され、保存される統計データはオーストラリア国内の安全なインフラで管理されます。

ホテルのスタッフに回答を見られる?

ホテルなどでPersonal Formを利用する場合でも、宿泊施設が旅行者の回答内容を統計目的以外に利用する仕組みではありません。オンラインで本人が回答するか、紙の場合は所定の方法でABSへ提出します。

プライバシーを理由に世帯とは別に回答したい場合も、個別フォームを依頼できます。




回答は義務?未回答だとどうなる?

オーストラリアのCensusは任意アンケートではありません。Census and Statistics Act 1905に基づく義務的な調査です。

2026年についても、ABSは「8月11日にオーストラリアにいたすべての人はCensus formに含まれる必要がある」と明記しています。

未回答の場合、ABSはまず回答を促す連絡や訪問を行います。それでも回答しない場合は、Censusを完了するよう書面による正式なDirectionが出されることがあります。

この法的なDirectionにも従わない場合は、Census and Statistics Actに基づく違反となり、訴追や罰金の対象になる可能性があります。

旅行者だから任意になるわけではない

海外旅行者もCensusの対象に含まれる以上、国籍や観光目的を理由に「回答不要」とはなりません。調査日にホテルなどへ泊まっていた場合は、施設やABSから案内された方法で回答します。



国勢調査の結果は何に使われる?

Censusの目的は、単に人口の総数を発表することではありません。集められた統計は、学校、病院、交通、住宅、福祉、地域サービス、インフラなど、幅広い政策・計画の基礎になります。

また、各地域の人口構成、言語、年齢、職業、所得などを細かく把握できるため、地方自治体、企業、研究機関、非営利団体などもCensusデータを利用します。

2026年データは段階的に公表

2026年Censusの結果は一度に全部発表されるわけではありません。ABSは段階的なリリースを予定しています。

時期 主な予定
2027年6月 人口、年齢、家族、文化、住宅など大半の主要項目。
2027年10月 雇用、職業、資格など追加項目。
2028年以降 通勤距離、SEIFA、ホームレス推計、詳細データなど。

つまり、2026年8月に調査を行っても、最終的な詳細統計が出そろうまでには1年以上かかります。

オーストラリアの国勢調査に関するよくある質問(FAQ)

2026年のオーストラリア国勢調査はいつでしたか?

2026年8月11日(火)がCensus nightでした。

この夜にオーストラリア国内にいた人を基準に調査します。

日本からの観光客もCensusに回答する必要がありますか?

はい。Census nightにオーストラリア国内にいた海外旅行者は、滞在期間の長短に関係なく原則対象です。

外国外交官とその家族など限定的な例外があります。

ホテルに泊まっていた場合はどう回答しますか?

ホテルやホステルなどはNon-private dwellingとして扱われ、通常は1人用のPersonal Formで回答します。

Residential statusでは旅行者なら「Guest」を選びます。

友人宅に泊まっている旅行者はどうしますか?

その住所のHousehold Formに、Census nightに宿泊したVisitorとして含めてもらうのが基本です。

プライバシー上、別フォームを希望する場合はABSへ依頼できます。

短期旅行者は「通常居住地」をどう答えますか?

普段は日本に住み、豪州への訪問が1年未満なら「Other country」を選びます。

Census nightの宿泊場所と、普段住んでいる場所は別々に記録されます。

日本語で回答できますか?

2026年Censusでは日本語を含む26言語の案内情報が用意されました。

通訳が必要な場合はTranslating and Interpreting Service(TIS)も利用できます。

宗教の質問にも必ず答える必要がありますか?

宗教の質問は任意です。

2026年に追加された16歳以上のジェンダーと性的指向についても、「Prefer not to answer」が選べます。

Censusに答えないと罰金になりますか?

Censusは法律に基づく義務的な調査です。

未回答者にはまずABSが回答を促し、それでも応じない場合は法的なDirectionが出されることがあり、そのDirectionに従わないと訴追や罰金の対象になる可能性があります。

まとめ

オーストラリアの国勢調査は、5年に一度行われる国内最大規模の統計調査です。最新のCensus nightは2026年8月11日でした。

日本人にとって特に覚えておきたいのは、対象者がオーストラリア国民・居住者に限定されないことです。調査日の夜に国内にいた短期旅行者、留学生、ワーキングホリデー、出張者なども原則として調査票へ含める必要があります。

ホテルやホステルではPersonal Formを使い、旅行者は「Guest」として回答します。日本から1年未満の短期滞在なら、通常居住地は「Other country」とします。友人や親戚の家に泊まっている場合は、その世帯のHousehold FormにVisitorとして含めてもらいます。

回答はオンラインが中心ですが、紙のフォームや言語支援も利用できます。Censusは法律に基づく義務的な調査であり、旅行者だから任意になるわけではありません。

一方、ABSには厳格な秘密保持義務があり、回答は個人を特定できる形では公表されません。人口、学校、医療、交通、住宅、福祉、地域インフラなどを計画するための基礎統計として利用されます。

オーストラリアの国勢調査に関する参考情報



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